「愛の不時着」のオリーブチキン、知られざる軌跡 韓国味噌味「ヤンニョムチキン」も広まった
なぜそのワタミが、まだコロナでもない2016年当時にチキンの専門店を展開することになったのだろうか。ワタミbb.qオリーブチキン事業本部長の小副川裕久氏に聞いた。
「bb.qチキンは、韓国でワタミの運営を行っている会社です。実は、同社はこれまで2007年、2014年と2度、直営で日本に進出しようとしたのですが、いずれもうまくいかなかった。そこで当社に相談がきたのが始まりです」(小副川氏)
同氏は、過去、日本での展開が挫折してしまった理由として、韓国と日本のチキン文化の違いがあるのではという。
「韓国のbb.qチキンはレストランタイプのチェーンで、ビールといっしょに楽しむスタイルです。しかし日本では、チキンといえばファストフードや軽食としての位置付けです。だから、本国と同じレストランタイプがなじまなかったのではないでしょうか」(小副川氏)
そこで、ワタミでは業態の開発からワタミが担うことを条件に、日本での運営を引き受けたという。
チキン以外はすべて日本オリジナル
ターゲットとして強く意識したのは女性だった。
「女性の社会進出が進む中、ランチをとったり、疲れて帰ったときに立ち寄り、夕食用にテイクアウトしてもらえるような店を目指したいと思いました。健康を意識したときに、ハンバーガーと比較してチキンなら罪悪感が少ないですよね。バーガーにチキンやサラダ、いろいろと選択肢を増やし、日常的に利用してもらえるチェーンを意図しました」(小副川氏)
メニューもチキン以外はすべて日本オリジナル。ランチで利用する客を想定し、サンドやライス、サラダといったメニューも加えた。
工夫したのがドリンクメニュー。ファストフードではドリンクが利益の大きな部分を占めるため、単品でなくセットで購入してもらう必要がある。そこで「ストーリーをもったドリンク」を開発した。それが、“名物”の生搾りレモネードだ。
皮ごとコンポートしたレモンのシロップに店舗で搾った生のレモンのジュースを合わせる、「ダブルレモン製法」を考案。生のレモンのフレッシュさと皮の苦み成分、旨味などが合わさった奥行きのある味わいに仕上げた。
そしてオリーブチキン、ヤンニョムチキンなどのチキンメニューは本国のレシピを踏襲。店舗で下処理したチキンに、オリジナルスパイスをまぶしてカラッと揚げたチキンは、ほどよい自然なスパイシーさで、いくらでも食べられそうな軽い味わいだ。
その秘密はフライオイルにある。スペイン・カタルーニャ地方の契約農家から仕入れる「神の贈り物」と呼ばれるエキストラバージンオリーブオイルと、コレステロールゼロのソイオイルを配合したものだという。
またささみを使ったオリーブチキンフィンガーも本国のオリジナルメニューで、オリジナルチキンやヤンニョムチキンと並ぶ人気商品。
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