ついでに言うと、安倍首相が最終判断したからといって、その数日後にそれを踏まえた政府予算案ができ上がるわけではない。消費税率を上げるにせよ上げないにせよ、与党内にて税制調査会等で議論をした上で意思決定し、それを来年度の税制改正大綱という形で取りまとめる作業をしなければならない。
その最終作業を数日で終わらせるには無理がある。与党の決定を受けて、政府の税制改正大綱を閣議決定する。そうして初めて、消費税率の最終判断を受けた予算編成作業が進むことになる。
なお、これで予算編成過程が終わるわけではない。税制改正大綱を受けて、国税と地方税の税収の見積もりを行い、地方交付税交付金以外の歳出予算の額を確定させる。そして、予算編成最終盤に、総務省と財務省の間で「地方財政対策」と呼ばれる、地方財政の予算に関する取りまとめが行われる(地方財政対策は、国税と地方税の見積もりや各省庁の地方向け補助金が確定しないとまとめられない)。
では、1次QEで7~9月期の経済成長率が芳しくなかったらどうなるか。1次QEだけで絶望的に悪い経済成長率が出るなら、即座に消費税率を予定通り引き上げるのをやめるという決断をするかもしれない。しかし、そんな絶望的に悪い経済成長率になるなら、9月に入った本稿執筆時点の現段階から、その前兆はもう出ているはずである。現段階では、そこまで悪い前兆は公表されていない。民間の予測でも、7~9月期の経済成長率は、4~6月期のよりは改善するとの見方が支配的である。だから、それはありえない。
「2次QE発表」まで決断持ち越しのシナリオは?
もし、「1次QEでの経済成長率では、自信をもって最終決断できない」ということなら、政権は恐らく7~9月期の経済成長率の2次QEを見極めようとするだろう。2次QEの発表は12月8日ごろに予定されている。
そこまで最終決断を引き伸ばす(12月は残り20日ほどしかない)と、予算編成は遅れに遅れ、来年の通常国会に提出する来年度政府予算案は年内には仕上がらず、年末年始をはさんで、越年編成が避けられない。越年編成をするような政権は、国政選挙の時期の都合を除けば、たいてい統治能力の弱さを厳しく問われる政権である。
2次QEの発表を見てから消費税率についての最終判断をする場合、予定通り引き上げるなら、そのつもりで水面下で準備をしていれば、年内に政府予算案を仕上げることはなんとかできるかもしれない。しかし、予定通りに引き上げない(引上げ時期を遅らせることも含む)なら、越年編成はほぼ不可避だろう。消費税増税によって財源を確保する予定にしていた政策には予算が付けられず、単に予算を削減するだけでは済まず、補完的な政策の策定や予算繰りを別途考えなければならない。そのうえ、前掲した2015年度における財政健全化目標の達成は絶望的となる。
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