武田真治がつまずいたからこそ掴めた潔い生き方 「順序良い人生より、チグハグな人のほうが面白い」

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武田は「努力していない人たちの意見に、個人の特性が飲み込まれる時代になってほしくない」と、そのくだりを結んでいる。

「美しいことに羨望するのは健康的だと思います。それが羨望ではなく嫉妬になると、すごく不健康になる。嫉妬だけではないのかもしれませんが、ネガティブな感情的書き込みが大衆の総意かのごとく、ネットで大きな存在になってしまっている今の風潮は、あまり好きじゃないんです」

外野からのノイズ

(撮影:塚本 弦汰)

著書には、ネット社会、SNS社会における武田なりの“対処法”とも読める言葉も並ぶ。

「ノイズ(人の強がり)の中でも乱れることなく自分の核を保つ」
「SNSの情報は自分の経験になりえません」
「正義を口で語るな!」
「匿名で人を攻撃するような正体のない負け犬の遠吠えに屈する必要はないのです」

自らの努力で勝ち得たもの、成し遂げたことであっても、SNSでひとたびその喜びをつぶやけば、外野から「僕が不快になりました」と飛んでくる。嫉妬に満ちた時代だ。しかしそのようなノイズを避けようにも、多くの人は現実的にSNSを使わざるをえない。

「SNS上にも必要な情報はあるけれど、それと同じフォントで、まったくのデマも書いてありますよね。何がデマで何が真実に近い言葉なのか、見分けるのは本当に難しい。見知らぬ誰かから自分に向けられた些細な異議を、あたかも国民全員からダメ出しされているように思ってしまうのも仕方ありません。だけど、自分に対する意見なんて、目の前に5人なり10人なりが実際に現れて、直接言われてはじめて考えたらいいんじゃないですか? 『俺、最近よく同じこと言われるな。じゃあちょっと見直してみようかな』くらいでいい。匿名の1万人に言われても気にする必要はないんですよ。匿名ならなんとでも言えますから。とにかく、文字がすべてではないってことです。所詮、文字なんですから」

武田はそう言ったのち、すぐに「すみません、文字書きの人の前で……」と気遣った。自分の発した言葉を、他人がどう受け取るかをつねに考えている。それは著書内のこんな言葉にも現れている。

「人の『思い』を絶対バカにしない」
「人を挑発しない、人の挑発に乗らない」
「論破して頷かせるなんて一番してはいけないことだ」

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