武田真治がつまずいたからこそ掴めた潔い生き方 「順序良い人生より、チグハグな人のほうが面白い」
昨今Twitter上で繰り返されている地獄のような口撃合戦が、いくつも思い起こされた。いかにして相手を言い負かし、逃げ場をなくしてやり込めるか。対話や相互理解からは程遠い、勝ち負け重視のマウンティングゲーム。そんな状況をどう思っているかを尋ねてみた。
「リングに上がって戦っていない人の言葉に重みは感じません。リングの外から放たれた言葉は、KOシーンをスローVTRで見て、『俺ならあのパンチをよけられたのに』って言ってるようなもの。人がやっていることをアフレコしている。ボクシングで言うなら、現実の痛みや恐怖を知らない人のアドバイスってなにかの役に立つのでしょうか?」
武田は30歳になる少し前から、ボクシングをはじめた。元世界チャンピオン・井岡弘樹の勧めだ。それゆえ、ボクシングのたとえは実体験に基づいている。
「リングの上で戦ってない者同士がリングの外で論破しあっても、勝ちも負けもありませんよね(笑)。ビジネスの方法論もどんどん変わっているのでしょう。海外に住んで日本に高い税金を納めないで済む方法など、新しい生き方のいろんな成功例が耳に入ってくる時代です。昔ながらのやり方で生きている人には、そういう新しい生き方が賢そうに見える。もちろん取り入れられるものは取り込んだらいいと思いますが、僕は賢い生き方とカッコイイ生き様はイコールではないと思っています。だから真新しい賢さに惑わされる必要なんてないんですよ」
静かに言葉を発しながら、しかし断固とした異議が示される。
『スター・ウォーズ』は順番どおりに作られていない
そもそもリング上での戦いも勝ち負けだけで測れないと、武田は言う。
「実社会では必ずしも勝利者だけが讃えられるものでもない。時に勝てなくていいんですよ。自分の主戦場で精一杯努力し己を知ること自体に意味があるんです。勝ち負けの判定を恐れ、いつまでもリングの外から人の人生を野次るより、自分の主戦場を見つけて日々努力を重ねていくほうが未来はきっと明るいはずです」
勝ち負けを価値観の最上位に置く人は、こうも考える。最小の労力で最大の効果をあげるべし、無駄なことをせず最短距離で、そうできないのは“情弱”であると。若者にもビジネスマンにも見られる風潮だ。
「それを言うなら、僕は最短時間でティーンエイジアイドルアクターになりましたけれど、結局はその後の帳尻合わせが大変でしたよ(笑)」
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