「新しい資本主義」経営者にまるで支持されない訳 「分配なくして成長なし」が無視する2つの矛盾

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10月に楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「新しい資本主義」について「新社会主義にしか聞こえない」と公然と批判しました。ただその後は、政府と喧嘩するのは得策でないと判断したのか、三木谷氏やほかの経営者は、政治的な発言を控えています。

分配する側の経営者は、この問題をどう考えているのでしょうか。今回、大手・中堅企業の経営者14名に「新しい資本主義」についてアンケートとヒアリングで調査しました。まず「分配重視の政策を支持しますか」とアンケートで尋ねました。

「支持する」2名
「支持しない」9名
「その他」 3名

「その他」は「どちらでもない」「わからない」ということで、「まだ岸田首相の新しい政策が具体化しておらず、判断できない」(物流)といった理由でした。

代表的な回答を紹介しましょう。まず「支持する」という経営者から。

「賃上げへの取り組みには賛同します。当社でも、中間管理職の給料は国内よりアジアの拠点のほうが高くなっており、日本が貧しくなったと痛感します。賃金を上げるのは、経営者の重要な責務と考えます。ただ、わが社だけが突出した賃上げをするのは非現実的なので、賃上げをしやすい環境づくりを政府にはお願いしたいところです」(商社)

一方、強い口調で分配重視を批判する経営者がいました。

「私は創業以来30年以上、お客様により良い商品を届けるため、従業員により良い生活をしてもらうために、必死に努力してきました。口幅ったいですが、まさに命がけです。そういう努力をせずとも、金持ちから貧乏人に金を配るだけで経済成長できるというなら、世の中に苦労なんてありません。分配で成長って、ちゃんちゃらおかしい」(小売)

「コロナなどで困窮した世帯を支援するのは大切です。しかし、分配をこの国の形にしようという姿勢には、強い違和感を覚えます。経営者としては、分配重視で活力を失い、縮んでいく一方の日本で投資や雇用を増やす気にはなれません。当社ではすでにシンガポールなど海外拠点に調達や財務などの機能を移管していますが、将来は本社移転も真剣に考える必要がありそうです」(電機)

結局、岸田内閣では何も変わらない?

今回の調査で個人的に最も考えさせられたのは、「支持しないが、猛反対ではない」と回答した経営者の次のコメントです。

「分配が成長を促すという主張は、説得力ゼロです。ただ、岸田首相は柔軟性があるようなので、分配重視では経済が良くならないとわかったら、すぐ成長重視に転換するでしょう。という前に、1年も持たずに岸田政権が崩壊する可能性もありますし。静観することで良いのでは」(部品)

つまり「なるようにしかならないから、あれこれ考えても無駄」というわけですが、本当にそれで良いのでしょうか。

9月の自民党総裁選では、新自由主義の安倍政権・菅政権の後継を分配重視の岸田現首相と改革重視の河野太郎氏が争いました。かなり大きな違いですが、政策論争は深まりませんでした。岸田首相が就任した後も、「議論しても仕方ない」「お手並み拝見」「それよりコロナだ」ということで政界・財界・国民の国の形を巡る議論は低調なままです。

コロナ対策が決まったら、早々にこの国の形を巡る議論が活発になることを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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