ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く

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たくさんの変異があるからといって、本当にそれが全体としてウイルスにとって有利な変異になっているのかはわからない。確かに、オミクロン株に起きているこうした変異を1つひとつ見れば、より感染しやすくなっているように見える。

だが大事なのは、スパイクタンパク質全体の「構造」がどう変わっているかだ。変異が起きている部分を個別に見て、感染しやすさや重症化のしやすさを判断することはできない。

フーリンによる切断部位に入った変異も、そこに変異が入ることによって結果的にさらに切断されやすくなって感染性が増すのか、逆に切断されにくくなっているのか、どちらの可能性もありうるため、実際のところはまだわからない。これから出てくる研究成果を見なければいけない。

――改めて、ウイルスにとって変異とはどんな意味を持つのでしょうか?

そもそも一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはずだからだ。

変異株の大半は人知れず消える

――つまり「変異ウイルス=人間にとって危険」というわけではないのですね。

みずたに・てつや/1964年生まれ。1990年北海道大学獣医学部卒。1994年北海道大学獣医学部大学院博士課程修了。国立感染症研究所主任研究官、国立がんセンター研究所ウイルス部研究員などを経て、2013年から東京農工大学農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター(現・感染症未来疫学研究センター)長、教授。専門はウイルス学(写真:水谷氏提供)

感染しにくくなるような変異が起きればもちろんその株は流行しないし、逆に感染者の致死率が高くなるような変異が起きてもウイルスは広まることができない。こういう変異は数多く起きているはずだが、ほとんどの変異株は人知れず消えていってしまう。

だからわれわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない。疫学的にも調べないと結論は出ないが、本当にこのままオミクロン株がデルタ株に代わって感染の主流になっていくのであれば、感染しやすくなるような変異が起きた、と考えるのが自然だ。

――オミクロン株ではワクチンなどによる中和抗体の効き目の低下が懸念されていますね。

中和抗体からどのようにウイルスが逃れているのかは、実際に中和抗体を持った人の血清を使うなどして研究する必要があるので、効果の有無を確認するのには時間がかかる。 

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