ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く

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重要なのは、感染の足がかりになるスパイクタンパク質の中でもその一部、「受容体結合領域」と呼ばれる場所で起きている変異だ。ヒトの細胞に侵入する際、直接細胞と接する領域で、ここに変異が起きていると感染のしやすさなどに変化が起こりやすい。

オミクロン株の受容体結合領域の変異を一つ一つ見ると、実験室レベルではヒト細胞とウイルスとの融合を促進することがわかっているもの、中和抗体から逃れる可能性があるもの、それからすでに感染性を高めることがわかっているものなどがある。

さらに、受容体結合領域の外側ではあるものの、領域の構造に影響を与えて感染性を高める変異も起きている。

オミクロン株の変異の特徴は、(イギリス、南アフリカ、ブラジルで最初に確認された)アルファ・ベータ・ガンマ株に近い。そこにインド由来のデルタ株の変異も一部が入ってきたようなイメージだ。

感染しやすくなるなどの特徴がすでにわかっている変異が、これまでの変異株には2〜3つだったところ、オミクロン株には少なくとも4つは入っている。

かなり厄介な存在の可能性も

――ほかにも懸念すべき点はありますか?

新型コロナが細胞に侵入するとき、「フーリン」と呼ばれるタンパク質分解酵素がスパイクタンパク質を切断するプロセスがある。気になるのは、オミクロン株では初めて、フーリンによって切断される部位の近くにも変異が起こっていることだ。

同じコロナウイルスであるSARSやMERSコロナウイルスは、フーリンによって切断されるこの部位そのものを持っていない。新型コロナウイルスは、この切断部位を持ったことで感染効率が上がり、SARSやMERSコロナウイルスよりも感染が広がったといわれている。

そのため、もしこれがより切断されやすくなるような類いの変異なのであれば、明らかに感染しやすくなっていることになる。変異が起きている場所(フーリンによって切断される部位の近く)だけを見ると、オミクロン株はこれまでの変異株に比べてかなり厄介な感じに見えるのは確かだ。

――その一方で、現在主流のデルタ株に比べてどれだけ感染しやすくなっているのかや、重症化しやすくなっているのかなど、まだ詳しいことはわかっていない状況です。

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