市民の中には原発と共生してきた人も多い。自分の家族や親戚に原発関係者がいる人が多く、原発からメリットを受ける事業者も少なくない。それだけに、原発のないほかの地域と比べて、住民が本音をあまり口にしない。内々では原発がないほうがいいと思っている人がそうでない人よりも多いと見られる。市議会は再稼働賛成派が圧倒的多数だが、一般市民との間に“ねじれ現象”がある。
市長もねじれ現象を承知のうえで、議会の意見を聞いて(再稼働同意を)決めると言っている。われわれが求める住民投票は「しない」と言い、公聴会も「やらない」と拒否している。今の議会は(原発賛成派の)保守系に取り込まれており、市民の声を拾い上げる姿勢に乏しい。民主的な手続きを踏めば、状況がひっくり返りかねないと恐れている。
福島事故では、誰に責任があるのかも明らかになっていない。先日、検察審査会が東京電力の元幹部3人を起訴相当としたが、いろんな制度を作った行政機関は責任を取らない。責任の所在がはっきりしないものを再稼働していいのか、非常に疑問だ。
今後、地元住民に対する規制委や政府の説明会が開かれるというが、「説明のための説明」にすぎない。避難計画については対象外で、(審査合格に関する)形だけの説明では市民の多くが納得しないだろう。(談)
視察してわかった実効性なき避難計画
市民は福島事故から学んでいる
井上 勝博(川内原発対策調査特別委員会委員、日本共産党)
7月29日に市議会の特別委員会で緊急時の避難先や避難経路を視察し、問題点の多いことが改めてわかった。
原発から5キロメートル圏内の要援護者(高齢者や障害者など)のための一時的な屋内退避施設は、52人収容にしては狭く、密閉されて圧迫感があり、かえって不安感の高まるような場所だった。医師が駆けつける態勢もできていない。
また、川内川に沿った避難経路を視察したが、道路が低いところにあるため、高潮や津波で寸断されやすく脆弱だ。スクリーニングポイント(放射能汚染検査の場所)も決まっていない。大渋滞のうえにスクリーニングをしたら、避難にはかなりの時間がかかりそうだ。避難用のバスについては、バス協会との交渉が難航しており、バスを何台手配し、運転手をどう確保できるかが決まっていない。
30キロメートル圏外の避難先として、鹿児島市と南さつま市の避難施設も訪れた。鹿児島市内の施設は大きなホールだったが、ホールの管理者は「われわれは場所を提供するだけ。それ以外のことは聞いていない」と言っていた。単に場所があるだけで、受け入れる側の態勢ができていない。
南さつま市の避難施設は、1200人以上を収容するとしていたが、本来収容人員に入らないホールの固定椅子482席をカウントしていた。薩摩川内市側はミスを認めたが、すべての施設を現場で確認しているわけではない。これでは単なる机上の計画だ。急いで計画を作ったものだからこうなる。
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