「ユニクロ銀行」が誕生する日も遠くない!? エンベデッド・ファイナンスの恐るべき衝撃
また、銀行口座を提供し、社員やアルバイトスタッフの給与受取口座として使用することも考えられる。ユニクロの従業員数は、準社員やアルバイトを含めると、国内だけで4万人を超える。ジーユーも含めれば、6万人を超える規模である。ユニクロ銀行に口座を開設し、給与受取口座にしてもらえば、振込手数料の削減につながる。ユニクロの場合、ポイントプログラムを導入していないため、ポイントを口座開設のインセンティブにはできないが、紙の「ギフトカード」やメールやSNSで送れる「eGift Card」はある。これらをインセンティブにすることはできる。
もちろん、こうした銀行サービスはユニクロが単独で実現できるものではない。金融のノウハウを持つ金融機関の手を借りる必要がある。提携するのは、三井住友銀行(以下、SMBC)が有力視される。実はUNIQLO PayはSMBCが構築を支援しており、仮にユニクロが銀行サービスを提供するとすれば、SMBCが銀行の機能をBaaSとして提供するのが自然であろう。
金融構想なき企業は滅びる
ユニクロ銀行は筆者のまったくの妄想にすぎない。しかし、日常的に多くの顧客接点を持つ企業が自社のサービスに金融機能を組み込んで提供するのは、昨今の流れであり、「エンベデッド・ファイナンス」、日本語では「組み込み金融」あるいは「埋め込み金融」と呼ばれる。
一般事業会社が、金融サービスの提供に求められる資本要件やコンプライアンス要件をクリアしてライセンスを取得するのはハードルが高い。しかし、すでにライセンスを取得している金融機関やフィンテック企業と提携し、BaaSの形で金融機能を提供してもらい、必要な機能だけを選択して利用できるエンベデッド・ファイナンスのスキームであれば、以前とは比べ物にならないくらいカジュアルに金融サービスを提供できる。
本稿で紹介した以外にも、都心部の狭小戸建開発を得意とする不動産会社のオープンハウスもNEOBANKを活用して銀行サービスの提供に乗り出している。老舗百貨店の高島屋もNEOBANKを活用した金融サービスへの参入意向を表明している。また、人材派遣会社のパーソルテンプスタッフは、みんなの銀行が提供するBaaSを活用し、派遣スタッフ向けに銀行サービスの提供を開始している。開設したのは、みんなの銀行「テンプスタッフ支店」である。
APIを通じ、銀行機能をサービスとして提供するBaaSの登場によって、業界を問わず、さまざまな企業が銀行サービスの提供を開始している。ユニクロ銀行が誕生しても決して不思議ではない。
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