人からの相談に「提案や助言」が全く必要ない訳 相手の「思考整理」を手伝うだけがむしろいい

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以前、友人からある人を紹介したいと言われ、3人で食事をしたときの話です。

お酒も進んで場がすっかり和んだ頃、友人から「ちょっと、コイツの話を聞いてもらえないか。最近、なんだか元気なくて」と言われたので引き受けました。

その知人(Aさんとします)に話を聞いてみると、IT関係の会社を経営されていて、業績は順調で社員も育ってきており、仕事を安心して任せられるようになったとのこと。普通なら、思い悩むどころか順風満帆、いい状況です。

ところが、Aさんは「なんだか最近やる気が出なくて」と、ため息まじりにこぼします。

お話を聞いてみると、仕事は好調で、家族の問題もなく、健康の悩みでもなさそうです。

僕は、Aさんが何で悩んでいるのかを突き止めるために、「今はワクワクすることはありますか」と聞いてみました。

「ないなあ」
「それはどうしてですか?」
「最近は会社に行ってもすることがなくて、楽なんです」

仕事で楽できるなら、羨ましい環境ですが、本人にとってはどうやら空虚なようです。

「2、3年前はどうでしたか」
「2、3年前は、社員を教えたり問題解決で結構エネルギーを使ってましたね」
「そのころはワクワクしていた?」
「してました。会社に行くのも楽しかったし。今は、社員は自立して動いてくれているから、たまにメールで報告をもらって返事をするぐらいで。会社に行っても様子を見てすぐ帰ってくるから、手持ち無沙汰な感じです」
「会社で居場所って感じますか?」

こう僕が投げかけると、Aさんはハッとした表情になりました。このAさんのモヤモヤは、「会社に居場所がない」というのが原因でした。

そこで、

「僕も独立して10年ぐらいしたときに次のビジョンが見えなくなって元気がなかった時期があるので、今はそういう踊り場かもしれませんね」
と自分の体験談を話すと、
「それはどれぐらいで抜け出せましたか?」
と聞かれました。
「僕の場合は、次の山が見えるまでは3年ぐらいでしたね」
するとAさんは
「そういえば、会社に勤めてたときも、仕事ができるようになったら急にやる気がなくなって、モヤモヤしてた時期があったなあ。そのときは別の部署に異動になったら、元気になったんだけど」
と、何か思い当たることがあるようでした。

この話はそこで終わり、後は雑談をして会はお開きになりました。それから数日後、Aさんから「おかげで、元気が出てきました!」と感謝のメールが送られてきました。

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