日本はまた後塵?米国「夢の超高速計算機」の驚異 中核的な要素技術を最初に開発したのはNEC

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そもそも量子コンピューターとは、20世紀初頭の欧州を中心に最先端の物理学として確立され、原子核や電子などミクロ世界を説明する「量子力学」を計算の基本原理とする次世代計算機だ。

ちなみに「量子」とはもともと「エネルギー量子」から生まれた物理の専門用語で、ミクロ世界ではエネルギーが連続的に変化するのではなく、飛び飛びの離散値をとることに由来している。その最小単位が「量子」と呼ばれるものだ。

この「量子」ならでの特徴を生かした本格的な量子コンピューターが開発されれば、その計算速度は異次元の領域に達し、スパコンをはじめ従来の計算機がまるで「原始時代の石器」にも見えてしまうほどだといわれる。

1980~90年代、英国のデイヴィッド・ドイッチュ博士をはじめ先駆的な物理学者らが、量子コンピューティングを実現するための具体的な方式やアルゴリズムなどを提案した。いずれも「量子並列性」と呼ばれるミクロ世界の不可思議な現象を、超高速計算の理論へと応用したものだ。

「白でもあり、黒でもある」という状態を利用

私たちの生きるマクロな日常世界では、白はあくまで白であり、決して黒ではない。しかし量子力学によって説明される極小の世界では、「白は白であると同時に、黒でもある」という奇妙な状況が成立する。

要するに、1つのモノが同時に幾つもの異なる状態を取りうる。これが「量子並列性」と呼ばれる現象だ。

量子コンピューターでは、この量子並列性を利用して、1台のコンピューターの内部に自らの分身を無数に作り出す。これら無数の分身が協力して1つの仕事をこなすので、その結果として超高速の計算が実現されるのだ。

量子コンピューターの活躍が期待される分野は、いわゆる「NP困難(Non-deterministic Polynomial-time hardness)」などと呼ばれる特殊な問題群だ。

例えば、セールスマンが多数の都市を一度ずつ巡って元に戻る巡回コストの最小値を計算する有名な「巡回セールスマン問題」など、一般に「組み合わせ最適化」と呼ばれる問題が「NP困難」の一例として、よく引き合いに出される。

一見、簡単そうだが、都市の数が3つ、4つ……と増えていき、ある段階に達したところで、計算量が爆発的に増加するので手に負えなくなる。

これらは、計算方法がわかっても、それに従って実際に計算しようとすると現在最速のスパコンを使っても有限の時間内には解けない問題だ。このような難問は、IT、金融、自動車、化学、医薬品、航空、軍事などさまざまな産業分野に多数存在し、それらを解くために異次元のスピードで動作する量子コンピューターの出現が待たれているのだ。

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