日本はまた後塵?米国「夢の超高速計算機」の驚異 中核的な要素技術を最初に開発したのはNEC

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一方、もしも本格的な量子コンピューターが実現されれば、公開鍵暗号RSAなど従来の暗号技術が容易に破られてしまうため、ITや金融業界のほか、国防・諜報活動など安全保障の分野でも深刻な懸念を呼んでいる。

このため各国政府は量子コンピューターでも破ることのできない量子暗号技術の開発に躍起だ。

また他国に先駆けて本格的な量子コンピューター開発に成功した国は、産業競争面での強力なアドバンテージを得ることから、いわゆる「経済安全保障」の最優先課題ともなっている。

こうした量子コンピューターの中核となる要素技術が「量子ビット」だ。

パソコンからスパコンに至るまで従来のコンピューターでは、そのデータを表現する各ビットが0か1かのいずれかを表す。これに対し、量子コンピューターでは、従来のビットに対応する量子ビットが(ある確率分布に従って)0と1の両方の状態を取り得る。この奇妙な二重性が(前述の)量子並列性を生み出す源となっている。

量子ビットを実現するには、「超電導」や「電子のスピン」、あるいは「光の偏光」などさまざまな物理現象が利用されるが、現時点で最も広く使われているのは「超電導」を利用した方式だ。

「超電導量子ビット」はNECが開発

この超電導量子ビットは1998年ごろに、当時日本のNECに所属していた中村泰信氏(現在は博士、東京大学教授)、蔡兆申博士(現在は東京理科大学教授)らの研究チームが開発した技術だ。

ここで「超電導」とは、特定の物質において、その電気抵抗が低温でゼロになる現象のことだ。電気抵抗がゼロになると、ループ(環状)回路において電流が永久に流れ続ける。このループ電流は非常に安定しているので、これを用いれば量子コンピューターに必須の量子ビットを表現できると考えられた。

NECで開発された超電導量子ビットは、素材的にはアルミニウムと酸化アルミニウムなどから構成され、それらが互いに接する「ジョセフソン接合」という仕組みによって実現される。

アルミニウムは絶対温度1K(-272.15℃)近辺で超電導に達するが、そこにはジョセフソン接合によって右回りと左回りの電流が共存する奇妙な量子状態が出現する。

このうち「左回り」の電流を0、「右回り」の電流を1と定めれば、0と1が重ね合わさった量子ビットを表現できる。このような超電導量子ビットは、量子コンピューターを実現するうえで最も安定した素子として評価され、その後も各国で研究が進められた。

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