日本はまた後塵?米国「夢の超高速計算機」の驚異 中核的な要素技術を最初に開発したのはNEC

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2009年には、アメリカのイェール大学やカリフォルニア大学サンタバーバラ校などの研究チームが、半導体関連のシリコンやニオブなど標準的な材料や技術で超電導量子ビットを実現した。これによって「夢の量子コンピューターを本当に作れそうだ」ということを世界に示した。

その結果、2010年以降、IBMやインテル、グーグルをはじめアメリカの巨大IT企業はいずれも自社の量子コンピューターを開発する際に、この方式を採用することとなった。

他方、日本メーカーは超電導量子ビットのように中核的な要素技術で先行しながら、肝心の実機開発でアメリカ勢に後れを取ってしまった。

今は試験機レベルの製品だが…

現在、IBMやマイクロソフト、アマゾンなどは、自主開発あるいはスタートアップ企業などから調達した量子コンピューターを、クラウド・サービスとして提供している。これを通じてさまざまな業界の企業に量子コンピューターを使ってもらい、その普及を図っている。

日本で今年7月、川崎市の「かわさき新産業創造センター」で稼働を開始した量子コンピューター「IBM Quantum System One(IBM Q)」は、東京大学を中心に産業界と共同で設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」が各界企業による活用を促していく。

同協議会には金融や自動車、エレクトロニクス、化学をはじめ産業各界を代表する主要企業や大学など14団体が名を連ねている。

例えば、金融機関ではポートフォリオの最適化やリスク管理、自動車メーカーではEV用電池の開発や渋滞回避、化学メーカーでは画期的な新素材の開発などに量子コンピューターが大きな力を発揮すると見られている。

ただし現時点のIBM Qはわずか27量子ビットと、実用機というより試験機レベルの製品だ(この点は後述するアメリカの量子スタートアップ企業の製品も同じ)。したがって協議会の主な目的は、将来量子コンピューターが本格的に普及する時代に備え、今から使い始めることで量子コンピューターに習熟した人材の育成や情報交換を図ることだという。

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