日本にも海外インフレ波及、物価上昇圧力強まる 日銀中川委員・円安の影響は以前より複雑と指摘

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日本銀行の中川順子審議委員は、海外のインフレ高進が今後、日本の物価にも影響を及ぼす可能性に言及した。足元の消費者物価は原油価格の上昇や円安の進行などを背景に上昇圧力が強まっているとし、物価動向を注視しつつ、金融政策運営は現行の金融緩和を粘り強く続けていく考えを示した。

中川氏は24日、6月30日の就任後初のインタビューで、日本の物価動向について「ずっとゼロ%近辺という感じではなく、少し上昇圧力が強まっている」と指摘した。海外でインフレ警戒が続く中、「日本も何らかの影響を受ける可能性があり、引き続き注視していくということに尽きる」と語った。

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日本銀行の中川審議委員Source: Bloomberg

経済活動の再開を背景にインフレ懸念が台頭する米欧と対照的に、日本の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)は10月に前年比0.1%上昇にとどまったが、中川氏の発言は上振れ余地が生じつつあることを示唆したものだ。円相場が1ドル=115円台と4年8カ月ぶりの安値圏で推移していることも、物価上昇圧力につながる。

黒田東彦総裁が現在の円安は日本経済にプラスとの見解を示しているのに対し、中川氏は日本の産業構造の変化や日本企業の海外進出などを踏まえ、以前よりも「影響は複雑化している」と指摘した。円安・円高のどちらがいいという単純な話ではなく、「短期的な大きな変動についていくのは難しいので、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが最も望ましい」とした。

8年以上の大規模緩和でも2%の物価安定目標の実現は見通せていない。中川氏は安定的な経済成長や国民生活の安定を目指しており、「物価だけを2%にすることが最終目的ではない」と強調。金融政策運営は必要があればちゅうちょなく行動するとしながらも、目標の実現に向けて「イールドカーブ・コントロールの下で、副作用にも十分配慮しながら強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要」と語った。

来年3月末が期限の新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムに関しては、延長や終了などの判断は「経済活動に、特別プログラムの扱いを変化させても耐え得るだけの底堅さがあるかがポイント」と述べた。同プログラムは新型コロナ対応金融支援特別オペとコマーシャルペーパー(CP)・社債の増額買い入れで構成される。

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著者:伊藤純夫、藤岡徹

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