オートバックス「ゴードンミラー」躍進の理由 独自ブランドの第1号直営店と今後の成長戦略

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ゴードンミラー・クラマエの店内(筆者撮影)

小曽根氏が、とくに期待を寄せているのがアパレル系の販売員だ。同氏は、「カー用品の業界自体は、あまり高い接客力を持たない」と分析する。それは、タイヤやホイールなど、オートバックスをはじめとするカー用品店に訪れる顧客の多くは、「車検など必要に迫られているため、購買意欲がもともと高い」からだという。一方、服などのアパレルは、「ほかにもいろんなものがあり、すべてとは言わないまでも、絶対に必要なものは少なく、気分で購入されるお客様も多い。購買意欲が低くても、なんとか買っていただく高い接客力が必要」だという。

同氏は、アパレル系の販売員に対し、「人当たりがいい人が多く、意外にクルマや用品も多く売ることが期待できる」と分析する。直営店では、こうした従来のカー用品店になかった接客や販売のノウハウを開発・蓄積することで、ゴードンミラーを扱う先述のGAD店などにフィードバック。ひいては、オートバックス店舗でも応用することで、「グループ全体の売上向上に貢献したい」という。

今後の展開

今後の展開について語る小曽根氏(筆者撮影)

小曽根氏は、直営店について「計画はまだないが、今後も機会があれば増やしていく方針だ」という。場所は、ブランド訴求を考えると、やはり感度の高いユーザーが多い東京都内。また、「(今回オープンする)ゴードンミラー・クラマエよりも広い売り場面積が理想」だという。理由は、今後も用品や服のアイテム数が増加予定であること、それに「ゴードンミラーモータースの車種も増やす予定」だからだ。追加する具体的な車種などはまだ非開示だが、ラインナップ拡充の計画は進んでいるという。今回の直営店では、計3台程度の車両を展示しているが、今後車種が増えれば、当然ながら全モデルの展示は難しくなる。そのため、より広いスペースがある店舗が必要となるという。

ほかにも小曽根氏は、時代の流れもあり、「インターネット通販についても注力する」という。ネット通販は、同ブランドでも近年一番の伸びをみせている販路だ。限定商品の設定など、さまざまな取り組みで強化を図る方針だ。

さらに将来的には、「コンセプトのひとつである、ガレージからクルマで出かける行き先の提案として、宿泊施設も手掛けたい」という。場所や具体的な施設の詳細は「まだ決まっていない」というが、果たしてどのような事業を展開するのかも注目だ。現在は、まだコロナ禍がいつ完全に落ち着くかなど先行きは不透明である。だが、通年で自粛要請や緊急事態宣言がなくなるなど、無事に収束を迎えさえすれば、旅先にある宿泊施設の需要は、確実かつ安定的に増えることは間違いない。

加えて、外国人旅行者が戻ってくれば、インバウンド需要も期待できる。ブランドとの親和性を考えると、個人的にはグランピング施設なども面白いと思うが、果たしてどんな施設になるのか。今後も、同ブランドには、まだまだ面白そうな展開がありそうだ。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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