勤め先から「辞めてほしい」と言われ、やむなく離職した際に味方になってくれるのが雇用保険制度だ。雇用保険制度では、仕事を辞めた人が、失業中の生活を心配することなく、早期に再就職できるように求職活動を支援することを目的に給付がなされる。コロナ禍においては、シフトが減少したことを理由に離職した人に特別な取扱いがなされるなど、さまざまな特例が設けられている。
雇用保険制度にはさまざまな給付があるが、一番有名なのが⑤失業手当(求職者給付の基本手当)である。一定の要件を満たす雇用保険の被保険者が、解雇・倒産・自己都合などにより離職し、働く意思と能力がありながら就職できない場合に失業手当が支給され、失業状態にある日ごとに離職前賃金の50~80%が給付される(上限額・下限額あり)。
原則として、離職の日以前の2年間に、11日以上または80時間以上働いた月が12カ月以上あることが受給資格を得るための要件となっている。ただし、倒産・解雇などによって離職を余儀なくされた場合は、離職の日以前の1年間に11日以上または80時間以上働いた月が6カ月以上あれば、受給資格を得ることができる。
注意しておきたいのが「離職理由」
失業手当を受給するうえで注意していただきたいのが、離職後に会社から交付される「離職票」に記載される離職理由だ。離職票の記載内容によって、失業手当の支給開始時期や給付日数が変わってくる。離職理由が「自己都合」であると判断されてしまうと、2カ月間の給付制限の対象となってしまい、給付を受けられるようになるまで時間がかかってしまう。
例えば、コロナ禍の影響が原因で会社が経営不振に陥り、退職勧奨を受け入れて離職した場合、通常は「会社都合」による退職になるが、「会社から送られてきた離職票を見たら自己都合と書かれていた」というような労働相談がよくある。事実と異なる記載をすることによって、労働者が自分から辞めたことにして、会社の責任をなかったことにするのだ。
このようなあくどい手法をとる会社は残念ながら数多く存在する。防御策として、退職の合意をする際には、離職理由を「会社都合」とするよう会社に求めるとともに、退職証明書の交付を受け、「会社都合」による離職であることの証拠を残す必要がある。
離職理由がどうなるか以前に、一方的な解雇や雇止めに遭って、そもそも会社を辞めることに納得がいっていない場合や賃金の不払いがある場合には、行政機関、労働組合、弁護士、NPOなどに相談していただきたい。