さらに、シェアハウスの問題も浮き彫りになっています。
首都圏では敷金・礼金といった初期費用が高く、家賃保証の審査に通らず家を借りたくても借りられない若者がけっこういます。そこで初期費用がかからず、連帯保証人も不要なシェアハウスに暮らさざるをえない人も一定数はいるということです。
不動産仲介業者を通じて借りる通常の賃貸物件は借地借家法によりある程度は入居者の居住権が守られますが、シェアハウスの場合はインターネットで情報を提供して大家と直接契約する形になっていて、入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。
家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています。
――追い出された人たちはどうしているのですか。
東京都の場合、昨年4月に都内のホームレス支援団体の連名で自治体に申し入れ、都がビジネスホテルを提供しています。そういった公的な支援で住宅を確保した人もいますが、緊急事態宣言が終わったらネットカフェに戻ったという人もいます。
ただ、コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です。
住まいを失うと求職活動のハードルが高くなる
――稲葉さんは以前から「ハウジングファースト」を訴えていますね。
住まいは生活の拠点であるのと同時に、いったん失うと求職活動をするうえでハードルが高くなります。
例えば、アパートの家賃を滞納してネットカフェに移るとした場合、もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除します。履歴書を書くときにはどうしても住所を書かないといけないですし、面接などをクリアして実際に就職するという際にも、住民票を出してくれと言われます。仕事探しのハードルが非常に高くなるんです。
今回のコロナ禍の公的な支援で典型的だったのは、昨年の特別定額給付金です。住民基本台帳のデータに基づき給付されたので、住民票のない人は受け取ることができませんでした。一部の自治体は融通を利かせて、ホームレスやネットカフェで暮らす人にも届きましたが、全体としてはほとんどもらうことができていません。公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります。
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