「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁

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中国共産党は第19期6中全会で「第3の歴史決議」を採択(写真:時事通信)

日本を含め世界中が注目した中国共産党の「第3の歴史決議」なる文書が先日、公表された。タイトルは『党の百年奮闘の重要な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議』(新華社日本語版の表記)。中国語での字数は約3万6000字、日本語訳は約5万5000字にのぼる。日本の新聞1ページの活字が約1万1000字なので、5ページ分相当の膨大な文書だ。

日本語訳が公表されたからといって全文を読む人は、中国研究者や政府関係者らごく一部の専門家に限られるだろう。筆者も覚悟して日本語訳を読んでみたが、これほど読みにくくわかりにくい文書はあまり見たことがない。翻訳が悪いのではなく、定義や意味が不明な抽象的な言葉や造語がこれでもかというほど次から次へと列挙されているから読みにくいのである。

しかし、決議が言いたいことだけはよくわかった。まずアヘン戦争以降に屈辱的な歴史を刻んだ中国の運命を変えて今の素晴らしい中国を作ったのは、結党百年を迎えた中国共産党であるということ。次にこれから先、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を実現するためにも中国共産党の指導が不可欠であるということ。最後は、その中国共産党にとって習近平国家主席の存在が党の「核心」として不可欠であるということだ。

共産党と習近平、断固とした「二つの擁護」

つまりこの決議は、中国共産党による一党支配と、習近平氏の権力を維持し継続することの正統性を示すための文書なのである。それは決議文の冒頭に登場する「二つの擁護」という言葉がはっきりと示している。「習近平同志の党中央・全党の核心としての地位を断固として擁護し、党中央の権威と集中的・統一的始動を断固として擁護する」というのがポイントで、ここに決議文の意図が明記されている。

では、中国は共産党一党支配と習近平体制の下でいったい、どういう国を目指しているのか。それを示すキーワードが「中国の特色ある社会主義」だ。決議文はこの言葉についていろんな角度から言及しており、それを整理してみると以下のようになる。

まずこの言葉を創り出したのはいうまでもなく習近平主席とされている。習近平氏が「どのような社会主義現代化強国を建設するか、いかにしてそれを建設するかについて、一連のオリジナルな国政運営の新理念、新思想、新戦略を打ち出した」というのである。問題はその具体的な内容であるが、冒頭に触れたようにわかりにくい。

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