オスプレイの拙速導入は、安倍政権による濫費 防衛省概算要求に隠された問題<後編>

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CH-47は高機動車や軽装甲軌道車などの車輌や重装備を運ぶことができる(撮影:筆者)

確かにオスプレイの方が巡航速度は時速446~476キロと巡航速度が時速257キロのCH-47JAよりも圧倒的に速いが、速度を言うのであれば、固定翼のC-130Hの方が時速550キロと、もっと速い。これに第一空挺団を搭載(1機あたり最大64名の搭乗が可能)し、落下傘降下させればより早く目標地点に降下させることができる。

オスプレイはキャビンが狭く、車輛などの大型装備は搭載できないため、落下傘降下による空挺作戦に比べてメリットがさほどあるわけではない。対してCH-47JAは、軽装甲機動車などの車輌をキャビンに搭載できるため、投入部隊はより高い火力と生存性が期待できる。

前述のように、オスプレイで敵の支配地域に強襲作戦をかける場合、かなりの損害を覚悟しなければならない。オスプレイでやりたいことは何か、それは既存の装備で本当にできないことなのか。この点を防衛省が真摯に検討したようには思えない。

どのように財源を確保するのか

そもそも陸自のヘリ調達予算は毎年300億~350億円程度に過ぎない。対してオスプレイ17機を中期防で予定通りに調達するならば、来年度から4年間平均して510億円の予算が、毎年必要である。ちなみに陸自の来年度概算用要求は約1.78兆円である。そのうち人件費・糧食費が1.2兆円。残りのは予算は6000億円弱に過ぎない。筆者は内局にも陸幕長にも質問したが、どのように財源を確保するかについて、明確な回答は無かった。

オスプレイの整備費用はヘリより高く、数倍はかかるといいう話もある。今後、そのような高額な維持費を払い続けることができるのだろうか。ほかにも費用は掛かる。防衛省には、オスプレイの整備施設を国内に誘致し、ここで米軍および陸自のオスプレイを整備する構想がある。だが、整備施設の設置場所としては韓国も候補に挙がっている。整備施設を誘致するためには、さらに多くのオスプレイ調達を米国側から要求される可能性もある。果たして陸自の予算がこうした支出に耐えられるだろうか。

オスプレイを自衛隊が導入し、本土に配備すれば、オスプレイは「危険」な航空機ではないとアピールでき、沖縄に「危険」なオスプレイを押し付けるわけではないというメッセージになり、沖縄などの反オスプレイ感情をなだめることができるだろう。これは筆者も否定しない。恐らく政府にもそのような腹づもりがあり、それがオスプレイの「政治採用」につながったのだろう。だが、そのような政治効果のためだけに導入するのであれば、法外に高い支出になる。

ただし、オスプレイをどうしても購入したいのであれば、有効な代案がある。オスプレイのうち、海兵隊型のMV-22ではなく、空軍の特殊部隊用のCV-22を3~4機、陸自の特殊部隊である特殊作戦軍を南西諸島に投入するために調達すればいい。現在、特殊部隊を投入する専門航空部隊が自衛隊に存在しない。これは先進国としては極めて異例である。日本からODAを受けているヨルダン軍特殊部隊の航空旅団は中型ヘリのブラックホークだけでも21機以上保有している(公式には8機と発表されている)。ヨルダン軍はそれ以外にも多数のヘリ、固定翼機を運用している。自衛隊に特殊作戦用航空部隊がないのは、時代遅れとしかいいようがない。

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