母たちは、「罪悪感」から逃れられるか? 周囲の”雑音”との付き合い方を考えよう

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起業直後に子どもが難病に…私の場合

さて、今日はせっかくなので、私の話をさせてください。

以前、こちらでも書いたのですが、昨年、子どもたちが小4と3歳というタイミングで、私は会社を辞めて起業することに決めました。ところが、退職日を4日過ぎたとき、保育園の先生から子どもの浮腫を指摘され、検査を受けたところ、そのまま緊急入院することになってしまったのです。

数万人にひとりの割合で発症する難病で、はっきりした原因のわからない病気。そして大人になっても、この子が持病としてこの病気と付き合っていかなくてはならないかもしれないという現実。会社を辞めたばかりで起業の準備が目白押しの中、3カ月の長期入院が決まって、私はうずくまりたいような気持ちになっていました。

「原因は不明」と言われているのに、「私が仕事にかまけて、この子の異変に気づかなかったのではないか」と自分を責め、「これからは、仕事なんてしないで子どもを見守る日々を送るべきではないか」と、決心しかけていました。

起業準備を後回しにして、病院と自宅を往復する日々を送っていたある日、主治医の先生がすれ違いざまに私を呼び止めて、「お母さんは仕事しているんだよね?」と聞いてきました。「ハイ。でももう仕事は難しいかもしれませんね……」と答えると、「あのね、お母さんは毎日、仕事に行きなさい」と、思いがけずきっぱりと言われたんです。

「彼もお母さんも、この病気のせいで何かをあきらめるなんて、絶対によくない。彼がごく普通にやりたいことをできるように、応援していくことが大事なんだよ。なのに、お母さんがやりたいことをあきらめちゃだめでしょ」って。

私はこのとき、思わず声を上げて泣いてしまいました。深夜の病院の廊下でした。

悩みぬいて、出した結論

私は、自分が人間として未熟であることをよく知っています。「子どもが入院しているのに、1日中付き添わないなんて」とか「持病を抱えた子どもを保育園に預けてまで、まだ働くつもりなの?」とか、周囲からの視線も気になって仕方ありませんでした。そして、自分を厳しく責めれば責めるだけ、好きな仕事を「辞める」ということが「罪滅ぼし」のような感覚になってしまっていたのです。

私は子どもの病気を自分のせいにするのと同じように、将来、自分が仕事を「あきらめた」ということを子どものせいにするのではないか。未熟な自分がまた、将来、「仕事を続けていたら」と未練がましく思い、心のどこかで子どもの病気のせいにするかもしれない……。そう想像して心底ゾッとしたし、子どもに心から申し訳ないと思ったのでした。

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