ワクチン「希望せずから接種へ」心変わりのワケ 第5波感染拡大が「接種意向」に与えた影響とは

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つづいて「感染しても適切な治療が受けられない」に関して、不安と感じている人の割合は、7月時点で「希望なし→予約・接種済」が42.2%、「9月も接種希望なし」が42.8%と、この2つのグループに差はなかった。

ところが、9月には、順に57.1%、45.2%であり、「希望なし→予約・接種済」が15ポイント上昇したのに対し、「9月も接種希望なし」は2.4ポイントの上昇にとどまり、両者に差ができていた。

この3カ月間は、自宅療養中に死亡した事例や、救急搬送ができなかった事例が多く取り上げられ、重症化しても治療が受けられない懸念が広がった。7月調査で接種を希望していなかった人の中で、適切な治療を受けることへの不安を感じた人がワクチン接種に向けて行動をおこした可能性がある。

■不安を感じる割合の変化(「非常に不安」または「やや不安」)

(出所)ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」

今後のワクチン体制は?

以上見てきたとおり、7月時点でワクチンを「あまり接種したくない」または「絶対に接種したくない」と回答していた人のおよそ半数が9月の時点でも接種希望がなく、4割弱が9月の時点では予約、または接種を済ませていた。

「希望なし→予約・接種済」を「9月も接種希望なし」を比較すると、「希望なし→予約・接種済」は、7月の時点で感染による健康状態の悪化に不安を感じる割合が高かったほか、9月の時点では、感染しても適切な治療が受けられない不安が大幅に上昇していた。身の回りの人の接種状況や、国内の感染状況、医療逼迫の状況等を踏まえて接種を検討したと推測できる。

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9月の調査で、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%にとどまり、接種意向のある人はおおむね予約を終えていると考えられそうだ。

国内の感染状況も現状では、落ち着きを見せており、2回目までの接種体制について規模を縮小している会場もあり、今後は3回目の接種が主流となるだろう。

しかし、感染の再拡大や重症化リスクの高い変異株の出現、自分自身や同居家族が重症化リスクの高い疾患を発症したり、妊娠するなどによってリスクが高まったとき、副反応の頻度や程度が現在より低いワクチンが開発されたときなどに、これまで希望していなかった人にも接種意向が生じる可能性がある。初めて接種を検討する人に対しても、必要な時に接種できる体制や案内が引き続き必要だろう。

村松 容子 ニッセイ基礎研究所保険研究部 准主任研究員

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むらまつ ようこ / Yoko Muramatsu

死亡・疾病発生リスクについて、統計的にその発生状況を算定すること、および、消費者調査を通じて消費者がどのようにリスクに対応するのかを研究。国が公表している疾病統計以外にレセプトデータ、健診データ、健康に関する消費者の意識調査などを使ってさまざまな視点から分析している。ニッセイ基礎研究所の著者ページはこちら

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