鉄道業界に衝撃、小田急「小児IC運賃50円」の勝算 2022年春に全線で適用、東急や他社はどう動く?

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さらに、出かけた人のうち9割以上の人が沿線で買い物をして、そのうち7割弱が小田急の施設を利用しているという調査結果も得られた。

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「小児運賃の低廉化によって大人の外出機会が増えることがわかった。大人の鉄道運賃収入が増加することに加え、当社グループで買い物をしていただければ、トータルで減収を上回る増収が狙える」と、小田急側は意気込む。「収支トントンに持ち込めるのであれば、やらない理由はどこにもない」というわけだ。

今回の施策ではコストを抑える工夫もしている。通常の小児運賃ではなく小児IC運賃のみで実施するのはそのためだ。「切符の紙代はばかにならない」と担当者は話す。紙の乗車券は50円ではなく半額のままとすることで、IC乗車券への移行を促したいという狙いがある。

東急社長は何を語った?

関東で沿線ブランド力の高い鉄道会社といえば、東急が頭ひとつリードする。その意味で、このような沿線のブランド力向上につながる施策は東急が先に始めても不思議はなかった。

では、東急は小田急の今回の施策をどう考えているのか。高橋和夫社長に直撃してみると、こんな答えが返ってきた。

「いいものはまねされることになる。先行者利益は多くない」ーー。

文字通り解釈すると東急も追随するという意味に取れる不気味な発言だ。一方で、東急は2022年1月に運賃値上げを申請するという方針を打ち出している。そのような状況で値下げという矛盾する施策を打ち出すとは考えにくい。となると、小田急とは別の形で子育てしやすい路線だとアピールすることになるのだろうか。

ある鉄道会社の広報担当者は、「子育てしやすい沿線を目指しているのはどの会社も同じ。小田急さんとは方法論の違いにすぎない」と述べた。

小田急が鉄道業界に衝撃をもたらした小児IC運賃50円化に対抗する施策を打ち出してくるのは東急か、それとも別の会社か。いずれにせよ、こうした動きが利用者にとって歓迎すべきことであるのは間違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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