ある「恋愛バラエティ」が挑む、"壮大な実験" テレビ離れする若者を取り込む「恋んトス」の仕掛け

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ユーチューブ向けスピンオフ動画の”冒険”

――放送されなかった場面をスピンオフ動画としてYouTube公式チャンネルで視聴できるんですね。ほかの局やさまざまな番組でスピンオフ動画は作られていますが、放送とYouTube向け両方のコンテンツを制作するにはマンパワーを増やさなければならず、制作コストが増えてしまうため、本気で取り組むに当たって二の足を踏むところも多いと聞いています。制作予算が少ない深夜帯の番組で取り入れるのは大変ではないですか?

さがP:テレビと違い、YouTubeはキャスティングで苦労しますね。有名なタレントさんに出てもらえれば見てもらえる動画コンテンツになりますが、予算的に難しい。

労力に見合った効果が現れるのか、スピンオフ動画は本当に必要なのか、いまだ手探り状態ですが、女子高生の間で“告うたのカリスマガール”と呼ばれているericaが歌う番組主題歌の動画は再生回数100万回を超えるなど、やり方を工夫すれば少ない予算でもできるという手応えはあります。

また、テレビではできないこと、YouTubeならできることがあります。たとえば、「出演者男女8人の露天風呂混浴シーン」だと、未公開シーンとして、「混浴後の男性メンバーの反省会」動画が公開されています。「おっぱいがデカいランキング」など女性メンバーがいなくなった後に続く男性メンバーのトークは、「男の本音」が出ていて面白いのですが、あらゆる年代、性別の人が視聴するテレビ放送向けではありません。

毎週月曜深夜0:41~ TBSテレビで放送

また、「ウラ面恋んトス」として制作しているスピンオフ動画では、カリスマブロガーのはあちゅうと主題歌を歌うericaが番組を見ながら恋愛トークを繰り広げています。女性同士の歯に衣着せぬ本音も、刺さる人には刺さるけれど、男性が聞いて気持ちのいいものではないかもしれないことを考えると、テレビ向けではありません。

ほかにも、出演者がスマホで撮影した動画は、プロのカメラマンが撮影したものより距離感が近く、きれいすぎない動画が、見ていてドキドキすることに気がつきました。

もちろん、テレビ局が制作する番組の公式チャンネルですから、ただ面白ければいいということはなく、人権侵害や人種差別など徹底して気をつけなければならない表現もあり、下品だと感じられるような作りにはしたくありません。それを前提としたうえで、視聴者がつぶやくツイッター上の生々しい発言やネガティブな意見も、そのまま番組制作に取り入れられたら、面白いものができるんじゃないかと考えています。

Web担やなぎ:ツイッターを活用したシステムを運用している中で、制作サイドのどのような対応に番組視聴者であるフォロワーが喜び、面白い感想がリツイートされ拡散していくのか、ほかの番組でも共有できそうなノウハウが少しずつ積み上がっています。

たとえば、フォローバックやRT付きコメントをすると、その人は、「恋んトス」のファンになって、「恋んトス」のことを多くつぶやいてくれるようになりました。このような形で番組側から視聴者に積極的に好意を示すということは、これまでの番組ではやっていなかったことです。

さがP:YouTubeの取り組みも、本気でいいものにしようと思えば、テレビ制作チームが“番組のおまけ”として作るのではなく、YouTube向け番組の企画や制作を専属で行うスタッフを作るべきだと思います。そうすれば、本編より面白くしてやろう、という競争心が生まれ、本編より面白い動画コンテンツが生まれるかもしれませんね。

(撮影:尾形 文繁)

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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