中国共産党ひっくり返す「動乱」なぜ起きないのか 覇権的な中国に「日本はどう考え対処すべきか」

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橋爪:精神的にコミットするべきですよ。なぜコミットできないかと言うと、それは日本軍国主義がアメリカや世界を相手に戦争したことが、どう間違っていたか、その認識が足りないからだと思う。

よく左翼の人びとが戦争に反対しますけど、ならば、アメリカは真珠湾を攻撃されて黙っていればよかったのか。そうしたら日本軍国主義の思うままだし、中国はそのまま植民地化されるわけでしょう。そんな軍事力による国際秩序のつくり方は間違っているから、連合国は軍事力で反撃した。

そのおかげで大東亜共栄圏じゃない、新しい世界秩序が出来上がったわけですよね。台湾が侵攻されるのを指をくわえて黙って見ていたら、大日本帝国が暴れ出したときも、みんな指をくわえて黙って見ていなきゃいけなかったことになる。戦後日本の否定です。そういうことを日本人1人ひとりが考えてほしいと思います。

西側の資本主義が自信を失っている

大澤:おっしゃるとおりだとは思うんです。ただ、なぜ私が心配するかといえば、日本を含めて、アメリカを中心とした西側の資本主義が、いま明らかに自信を失っているように見えるからです。自分たちのシステム、自分たちの資本主義が、中国に比べて本当に優位なのか不安をもっている。

ここに来て、アメリカが中国に対して厳しく対している理由は、そういう無意識の不安を抱えているからではないか。中国共産党のやり方への道義的な怒りだけではない。というか、急に怒りが強まった、真の無意識の原因があるように思います。

『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

橋爪:それは中国だって同じですよ。マルクス・レーニン主義の成れの果てが毛沢東と習近平だとしても、彼らが最終解であるなんてことはなく、彼らは彼らの困難に見舞われ、これから西側より優れているということを証明し続けなければならない。だから、悪戦苦闘していくはずです。

その悪戦苦闘をわれわれは共有して、自由と生活条件を整える現実主義との関係をもう一度考えてみる。自由とは、はたして普遍的な思想なのかということもね。そして、その普遍的な思想が、アメリカローカルな、西側ローカルな、キリスト教ローカルな考え方ではないのだということを証明していく必要がある。

それは日本がやればいいと思う。日本はキリスト教ローカルなあり方からはみ出ているんですから。歴史的に考えても、中国と西側世界の両方の影響をもろに被ってふらふらしている。だから、日本は逃げずに、この問題をしっかり考えていかなきゃいけないと思いますよ。これは、今回の対談で、大澤さんからいただいた大きな宿題ですね。

(構成・文=宮内千和子)

橋爪 大三郎 社会学者、大学院大学至善館特命教授

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はしづめ・だいさぶろう / Daizaburo Hashizume

1948年神奈川県生まれ。大学院大学至善館特命教授。『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『皇国日本とアメリカ大権』(筑摩選書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)など著書多数。共著に『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、新書大賞2012を受賞)、『おどろきの中国』(講談社現代新書)、『一神教と戦争』(集英社新書)など。

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大澤 真幸 社会学者

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おおさわ まさち / Masachi Osawa

1958年、長野県生まれ。社会学博士。千葉大学助教授、京都大学教授を歴任。2007年『ナショナリズムの由来』(講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞受賞。ほか『不可能性の時代』(岩波新書)、『三島由紀夫 ふたつの謎』(集英社新書)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『げんきな日本論』(講談社現代新書)

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