医療従事者の未接種の理由は、医療従事者だからこそ、ワクチンの安全性に疑問があるという人、すでにコロナ感染経験があり、抗体があるのでワクチン接種は必要ないと考えている人、SNSなどで広まったさまざまな陰謀説を信じて接種しない人などさまざまだ。
4つの行政区に分かれるイギリスでは、スコットランドとウェールズは、NHS従事者や介護施設のスタッフにワクチン接種を義務づける提案をしている一方、北アイルランドは明確な方針を出していない。
イギリス政府はワクチン接種が医療従事者自身を守るだけでなく、直接接触する患者を守り、ひいては感染拡大を防ぐことにつながることを理解してほしいと望んでいるが、結果的に接種を拒否する医療従事者がNHSから身を引き、医療現場の逼迫につながるリスクへの考慮も求められている。
一足先に義務化を実施したフランス
一方、フランスでは9月15日より医療従事者および高齢者施設の介護従事者へのワクチン接種義務化の実施に踏み切り、その時点で約3000人が停職処分となった。フランス保健省によれば、10月中旬時点で停職しているのは約1万5000人だが、未接種の医療従事者はいまだに約10万人はいるとしている。
心臓病をわずらうフランス人の筆者の友人は先月、担当医師からいきなり長期休暇を取ると一方的に通告され、重要な検査が延期されてしまったという。その医師はワクチン接種反対論者で、停職処分を避けるために自ら休暇をとった可能性が高いといううわさが広まっている。公共ラジオのフランス・アンフォは、都合よく休暇をとる医師もいると指摘する。
フランス政府が医療従事者へのワクチン接種義務化を発表した7月下旬以降、全国で抗議デモが起きているが、高齢者施設の入居者が接種を拒否する介護士を批判する声も上がっている。「働きたければ、接種を受けるべきだ」という看護師もいる。個人の選択の自由を重視するフランスだが、意見は大きく分かれているといえる。
日本人のようにマスク着用に慣れていない欧州の人々にとって、感染予防対策緩和のマスク義務化が解除された解放感は日本人の何倍も大きい。中には「マスクは呼吸ができなくなるので外出はしない」と決め込んでいたフランス人もいた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら