「女子力」が農業を生まれ変わらせる 「生活者目線」「主婦目線」が活性化のカギに

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加藤さんの新しい発想の土台になっているのが異色の経歴だ。東大農学部卒業後、留学先のイギリスで博士号を取得。アメリカでNASAによる宇宙ステーショ ンの植物生産機器の開発プロジェクトに、帰国後は大手メーカーや夫の親族が経営する会社で産業機械の分野に携わった。ベジプロバイダーはそうした経験から 生産管理や需給調整などで安定的にシステムを稼働させる考え方を持ち込んだ。

農業でハッピーを作る方程式を見つけた

首相官邸で8月27日に行われた地域づくりの有識者との懇談会で安倍首相と対談する加藤さん。首相官邸Facebookページより

そんな加藤さんが農業分野で起業に至ったのは、20代後半に母親になったことがきっかけ。産休や育児休暇で考える時間ができるうちに、中学生時代に関心を寄せていた環境問題への思いが蘇った。

「大量生産、大量消費を必要とする工業社会は環境に影響を与える。母親になり、次の50年、100年を考えるようになりました」。折しも静岡大学で開設された農業ビジネス講座に一期生として学べることになり、2009年10月に会社を設立。その3年後に政投銀のコンペで大賞を獲得してからはメディアでも注目され、この8月下旬には首相官邸で安倍首相と懇談した。

高齢化や後継者不足に直面する今の農業界に当然のことながら加藤さんも危機感を募らせている。しかし現場を歩き回るなか、「去年の秋に『農業×ANY』がハッピーをつくると、気が付いたんです」。これは『農業×観光』、『農業×環境』といった具合に「他の産業や異分野が農業を活用すると地域全体が回っていく方程式」というのだ。市場環境の変化に強く、成長する企業は、「ダイバーシティ(多様性)・マネジメント」の考えを経営に取り入れているが、まさに『農業×女性』は相当する。女性がもっと参画し、その知恵や価値観を生かした取り組みが農業イノベーションの重要な要素になる。

最後に。今回は慣れない農業取材に悪戦苦闘しましたが、ネット上の反響を見ると「農業を考えるきっかけになった」「こんな面白い取り組みがあるのか」といった声があり、励みになりました。もちろん「農業はそんなに甘くない」という批判もありましたが、賛否はあっても、「岐路を迎えている農業」に関心を持つきっかけになったのであれば幸いです。

新田 哲史 広報コンサルタント/コラムニスト

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にったてつじ

1975年生まれ。読売新聞記者(社会部、運動部等)、PR会社勤務を経て2013年独立。企業広報のアドバイス業務の傍ら、ブロガーとして「アゴラ」「ハフィントンポスト」にて評論活動を行う。2013年の参院選、14年の都知事選ではネット選挙案件を担当。東洋経済オンラインではネット選挙の記事を寄稿し、野球イノベーションの連載を企画した。

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