「女子力」が農業を生まれ変わらせる 「生活者目線」「主婦目線」が活性化のカギに

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一方、塚原さんは子供時代から環境問題に関心があり、東農大では遺伝育種を専攻。ただ農大といっても最初から就農を意識していたわけではなく、サークルで取り組んだ家庭菜園の栽培を通じて農業の面白さを実感し、やがて研修先の農家に魅了された。草刈りから、ぶとうの選別、収穫……速くて正確な動き。そして何よりも「夜一緒にお酒を飲むと話が止まらない。自分の育てているものへの愛があふれていた」。今まで接したことのない大人との出会い。それがあこがれになり、やがて進路に選ぶ決め手となった。

農業にもたらすウーマノミクス効果!?

ここで女性の就農についてマクロの視点から少し触れよう。第1回でも取り上げたように、日本の農業就業人口は過去十数年で3割余りも減少した。女性の割合も1995年(57.3%)、2000年(55.8%)と減り続け、ここ数年は5割をぎりぎりキープ。45歳未満の新規就農者のうち女性は23%と決して多くはない。

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農水省経営局就農・女性課の作成資料より。データは日本政策金融公庫「農業経営の現場での女性活躍状況調査」

しかし、女性農家の存在感を示すデータもある。農地の売買許可など各地の農業事務を取り仕切る農業委員会に選ばれた女性農家は2012年が2182人と5年間で400人余りも増えた(全体の6.1%)。さらに注目したいのは、農産物の販売金額は女性がいる農家のほうが高いこと。300万円未満では女性がいる農家の比率は41%だが、300万~500万円未満は74%、500万~1000万円は84%と上昇し、1000万~1億円未満は9割を超える(以上、農水省調べ)。日本政策金融公庫が融資先の大規模農家などを対象に行った調査でも、3年間で売り上げを伸ばした融資先は、女性役員・管理職がいたケースが23%。女性がいないケースの9.4%に大きく差を付けた。農水省が昨秋から農業女子プロジェクトを始め、企業とのコラボレーションを促す背景には、女性農家の「稼ぐ力」への期待がある。

では、農業における「女子力」の強みは何だろうか。

塚原さん、小園さんの就農相談に乗った農業支援センターの富田浩司・事務局長は「女性はきめ細かい観察力がある」と指摘する。キャベツや白菜といった重量のある品目の栽培などの力仕事は難しくなるが、観察力があれば病気や害虫などの予兆をいち早く察知し、農業で大事なリスク管理をできるのだ。

加えて男性の就農希望者よりも目立つのは現実的志向だ。「男性はロマンや夢を語りながら就農する傾向が強いが、女性はいくら儲かるとか現実的な部分を見るように思う」。塚原さんのときは希望に沿って2週間かけて数件の農家を案内。雰囲気や受け入れ先の農家との相性を見極めた上で就農先が決まった。

農作業中の塚原さん(左)と小園さん(農業支援センター提供)
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