旧車を電動化「コンバートEV」事業者が増える訳 3社取材でわかった旧車をEV化する本当の価値
同社では、CO2を排出する事業を多数展開することから、脱炭素化に真剣に向き合っていくべきだと認識してきた。その中で両備テクノモビリティーカンパニーは、西日本最大級の130人の技術スタッフを擁しており、軽トラックのEV化も実施している。
この技術力を活用しつつ、社会課題を解決するために「新車を買い続けること」から、EVコンバージョンにより「古いものを大切に使い続けること」へのパラダイムシフトを目指し、事業化に至った。
プロジェクトの発案が両備ホールディングス社長の松田敏之氏であることから、1978年当時の社長だった松田基氏が購入したロンドンタクシー(正式名称オースチン FX4)に着目し、レストアとともにEVコンバージョンを行った。
バッテリーは運転席横およびトランクに搭載しており、満充電での航続距離は100〜120km。今後は個人所有者の持ち込みのほか、中古車探しからのオーダーメイド、リース業者との連携に取り組んでいくとのことだった。
「500ev」は博物館がプロデュース
3番目に紹介するEVコンバージョンは、試乗することもできた。1957年から20年にわたり作られた2代目フィアット「500(チンクエチェント)」の保護や保存に努める、愛知県のチンクエチェント博物館がプロデュースした「500ev」だ。
博物館代表の伊藤精朗氏によると、イタリア本国で以前から存在していたEVコンバージョンキットを組み込むとともに、レストアも行ったうえで輸入されるとのこと。
バッテリーは、フロントノーズとエンジンルーム内の2カ所に収められ、満充電での航続距離は100kmとされている。
オリジナルの2代目500は、筆者も若い頃に乗っていた。当時所属していた自動車専門誌の編集部に長期レポート車として在籍していて、自分が担当だったからだ。
その500は排気量を500ccから650ccに拡大していたが、絶対的には非力で、アクセルを全開にし、各ギアで上限の速度まで引っ張って加速していくのが作法だった。しかも、マニュアルトランスミッション(MT)には、回転合わせを行うシンクロメッシュ機構がなかったので、ギアチェンジにはダブルクラッチを使う必要があった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら