旧車を電動化「コンバートEV」事業者が増える訳 3社取材でわかった旧車をEV化する本当の価値

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それに比べると、500evの加速は夢のようだ。アクセルペダルを軽く踏んだだけで、力強い加速が始まり、その後の速度の伸びも、一般道路で試した範囲では“活発”という言葉を使えるほど。

しかも、変速操作は必要ない。エンジン車の2代目500はMTしかなかったので、AT免許で乗れる初めての500とも言える。

バッテリーの搭載により車両重量は200kg以上増えているので、ステアリングは重く、ブレーキペダルは多めに踏むことになったが、どちらも不満を覚えるほどではない。

「500ev」の運転席まわり。デジタルメーターやEV化によるスイッチ類が違和感なく収まる(筆者撮影)

重さのおかげで重厚になった乗り心地や、前後の重量バランスがよくなったことによるハンドリングの安定感というメリットも知ることができた。

さらに感心したのは、単にパワーユニットをコンバートしただけではなく、メーターにデジタルディスプレイを組み込み、タッチ式スイッチやデジタルオーディオ、USBソケット、リモコンキーを採用したうえで、スポーツモードを新たに用意するなど、電動化を生かしたアップデートがなされていることだ。

コンバージョンEVも「エコカー」税制が適用

500evの生まれ故郷であるイタリアの都市に行くと、外観は歴史を感じさせる石造りのまま、内部をモダンにリノベーションした建物を目にすることがある。500evのコンバージョン内容はまさにそれに近い、モダンとクラシックが絶妙に融合したものだ。

コンバージョンEVならではのメリットは、オズモーターズも言及していた。エンジン車では初年度登録から13年を超えると自動車税が増税となり、18年超でその増税率が引き上げられるが、EV化によって増税対象から外れ、逆にいわゆる「エコカー」扱いになるので、税制面での恩恵が受けられるという。

オズモーターズによりEV化されるダットサン「フェアレディ」(写真:オズモーターズ)
エンジンルームからエンジンをおろし、モーターを搭載する様子(写真:オズモーターズ)

古いクルマはエアコンの取り付けが難しい車種が多いが、コンバージョンEVなら電動コンプレッサーを使うことでエアコン装備が容易になるというメリットもある。

気になる価格は、オズモーターズは車種によって異なるが車両持ち込みで500万円から。両備テクノモビリティーカンパニーのロンドンタクシーはレストア310万円+EV化400万円で合計710万円、チンクエチェント博物館の500evは車両代込みで660万円となっている。

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