ダイハツ「軽ハイブリッド」20万円高になる根拠 ヒントはロッキー「e-SMART HYBRID」にあり

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ところが2030年度燃費準では、車両重量が900kgの場合、JC08モードではなくWLTCモードで27.8km/Lをクリアしなければならない。現状のWLTCモード燃費は21km/Lだから、30%以上も向上させる必要がある。

スズキや日産の軽自動車はマイルドハイブリッドを採用するが、この方式はモーター機能付き発電機を搭載して、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う簡易型だ。

スズキは多くの車種・グレードにマイルドハイブリッドを搭載する(写真:スズキ)

 

搭載に伴う価格アップは、アイドリングストップ機構を含めて7万~9万円と安いが、燃費向上率は3~5%と低い。これでは、2030年度燃費基準には対応できない。

ロッキー/ライズのWLTCモード燃費は、1.2Lガソリン車が20.7km/Lで、e-SMART HYBRIDは28km/Lだ。e-SMART HYBRIDの燃費は、ノーマルエンジンを35%上まわる。

タントの21km/Lという燃費も、ハイブリッド化により35%向上するなら28.4km/Lとなり、2030年度燃費基準の27.8km/Lをクリアできる計算だ。

このようにe-SMART HYBRIDを活用すると、最小限のコストアップで軽自動車の燃費を大幅に引き上げ、2030年度燃費基準をクリアすることができる。これが実現できれば、軽自動車も含めて電動化を促進させたい、国や自治体のニーズに応えることも可能だ。

軽自動車への搭載第1号はムーヴか?

WLTCモード燃費が35%向上する軽自動車のハイブリッドが、20万円前後の価格アップで登場するのは、果たしていつ頃なのだろうか。取材をしたダイハツの販売店は、次のように述べた。

「直近で大幅な改良を実施するのは、12月の『ハイゼットトラック』のフルモデルチェンジ程度。『ムーヴ』は2014年の登場だから、大幅に刷新されてもいい時期だが、今のところ予定は聞いていない」

発売から7年目を迎えた「ムーヴ」(写真:ダイハツ工業)

日産と三菱は、軽自動車サイズの電気自動車(BEV)を2022年の4~5月頃に発売する予定だとしている。補助金を差し引いた実質価格は、最廉価グレードで約200万円になるという。売れ筋の価格帯は220万~240万円で、軽自動車としては高いが注目を集めるだろう。

日産と三菱のBEVも加わって軽自動車の電動化競争が激しくなると、ダイハツも安穏とはしていられない。2030年度燃費基準も視野に入れ、ムーヴのフルモデルチェンジなどを皮切りに、20万円アップで30%以上の燃費向上が見込めるe-SMART HYBRIDを投入するだろう。

また今は、トヨタとの提携を通じて、ダイハツとスズキの間にも繋がりができた。e-SMART HYBRIDのユニットをスズキに供給する可能性も、ゼロではない。“100年に1度”といわれる困難を乗り越えるために、従来考えられなかったダイナミックな提携関係が生まれる可能性も、十分にあるのだ。

この記事の画像を見る(9枚)
渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事