ダイハツ「軽ハイブリッド」20万円高になる根拠 ヒントはロッキー「e-SMART HYBRID」にあり

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気になるのは、今後のe-SMART HYBRIDの発展だ。前述のように発電機と駆動用モーターを別々に搭載するから、開発や製造には相応のコストが費やされているはずだ。

さまざまな車種に展開して量産効果を高める必要があるが、「ヤリス」やヤリスクロスはトヨタのTHS-Ⅱを採用している。そうなるとe-SMART HYBRIDを搭載できるのは、ダイハツが開発と生産を行う車種となり、小型車はロッキー/ライズ、ダイハツ「トール」/トヨタ「ルーミー」、ダイハツ「ブーン」/トヨタ「パッソ」の姉妹車に限られてしまう。

これらのうち、ブーン/パッソは売れ行きが低迷している。

4世代目となる現行型の「ブーン」(写真:ダイハツ工業)

もともとダイハツは軽自動車が中心のブランドだから、ブーンの売れ行きは少ない。トヨタ版のパッソも、同じトヨタのヤリスが1.0L、1.5L、1.5Lハイブリッドと多彩なパワーユニットをそろえたこともあり、こちらに需要を奪われている。

そもそもパッソは以前、カローラ店のみが扱うコンパクトカーであった。当時、ヤリスの前身である「ヴィッツ」はネッツ店のみで販売しており、パッソとヴィッツは販売店が異なるから共存できたのだ。

それが2020年5月以降は、トヨタの全店が全車種を販売するようになり、パッソとヤリスを両方そろえるメリットは薄れた。今のトヨタは、合理化のために車種を減らす方針を打ち出しているから、今後はパッソがヤリスに吸収されることも考えられる。そうなれば、ダイハツ版のブーンも消滅する。

本命は軽自動車にあり

実際、現行のブーン/パッソは発売から5年以上が経過するのに、ダイハツとトヨタの販売店を取材すると「次期型にフルモデルチェンジする情報は入っていない」と聞く。以上を踏まえると、ダイハツは低コストの新しいハイブリッドシステムを開発しながらも、搭載可能な車種が限られてしまうことになる。

ダイハツは、海外事業としてインドネシアとマレーシアに力を入れており、これらの地域でも電動化のニーズは高まりつつあるが、今後の動向は確定的ではない。また、ダイハツは軽自動車が中心のメーカーだから、他メーカーに比べて国内販売比率が高い。

ダイハツがマレーシアで販売する「アルズ」(写真:ダイハツ工業)

2021年4~9月のデータでは、ダイハツの世界販売台数に占める国内比率は66%に達していた。国内向けの軽自動車が多いスズキでも、販売総数に占める国内比率は23%だから、ダイハツは圧倒的に国内を重視している。

そうなると、e-SMART HYBRIDもトヨタへのOEMに依存せずに、国内で多く販売しなければならない。そこで必然的に考えられるのが、“軽自動車への搭載”だ。

次ページなぜ「軽ハイブリッド」が20万円と言えるのか?
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