中国事業が急失速、通信機器「エリクソン」の苦悩 スウェーデン政府の「ファーウェイ排除」が影響

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エリクソンの2021年7~9月期の中国売上高は前年同期の3割未満に落ち込んだ。写真はスウェーデンの本社ビル(同社ウェブサイトより)

スウェーデンの通信機器大手、エリクソンの中国事業が深刻な不振に陥っている。同社が10月19日に発表した2021年7~9月期の決算報告によれば、同四半期の中国本土での売上高は13億スウェーデンクローナ(約172億円)と、前年同期の50億スウェーデンクローナ(約663億円)から74%も落ち込んだ。

これに伴い、エリクソンの販売全体に対する中国本土の貢献度も低下している。2021年1月から9月までの累計売上高に占める中国本土の比率は、前年同期の8%から4%に半減。その結果、同期間の国別の販売ランキングで、中国は首位のアメリカ(35%)、2位の日本(6%)に次ぐ3位に後退した。

エリクソンの中国事業が失速した主因は、(中国とスウェーデンの外交関係悪化に伴う)地政学的な影響と見られている。2020年10月、スウェーデン政府が同国の5G(第5世代移動通信)ネットワークから中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を排除する決定を下したためだ。

これを受けて、エリクソンは「地政学的リスクが業績に実質的かつ長期にわたる負の影響を与える可能性がある」と、決算説明会などの場で繰り返し懸念を表明していた。

中国の営業・技術部隊のリストラに着手

実際、中国の通信事業者が2021年に実施した通信設備の入札では、エリクソンのシェアが大幅に低下した。例えば、通信最大手の中国移動(チャイナ・モバイル)が7月に発表した700MHz帯の5G無線ネットワークの入札結果では、エリクソンの落札比率はわずか2%だった。

こうした厳しい現実を背景に、エリクソンのCEO(最高経営責任者)を務めるボリエ・エクホルム氏は、7~9月期の決算説明会で現地法人のリストラに言及。「営業と技術サポートのチームを適正規模に調整しなければならない。それを10~12月期に実施する」と述べた。

本記事は「財新」の提供記事です

財新記者の取材によれば、エリクソンの中国法人はすでに9月末から組織再編に着手している。中国の3大通信事業者に個別に対応していた3つの営業部門を統合し、数百人の従業員を削減する模様だ。なお、エリクソンの中国法人は現時点で約1万人の従業員を雇用している。

(財新記者:何書静)
※原文の配信は10月20日

財新 Biz&Tech

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