日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない 6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか

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こうした「国民にお願いする」形の政策で、食料自給率の上昇は望みにくい。抜本的な発想の転換がないまま現在に至っている。一方、食料自給率の低迷が国の安全保障に最も大きく関わっていることを、国民ももっと知ったほうがいい。

太平洋戦争においても、約230万人が戦死したがそのうち餓死した兵士が半分以上だったと言われている。本当の意味のリスクに直面したときにどうすればいいのか……。そうした現実に目を背けたままでは、本当の日本の安全保障にはつながらないのではないか。

今や、海外では国防も戦車やミサイルの数だけではなく、サイバーセキュリティーや食料の確保といったことに重きが置かれていると言われる。食品ロスなどを抑えるという発想よりも、本気で安全保障を考えるのであれば、森林面積を多少削ってでも農地を増やす。あるいは使わなくなったゴルフ場等を簡単に農地に転換するシステムづくり、あるいは都会の空き家を一定の期間を置いた後で農地に転換できるようにする、などなど……。新しい時代に沿った画期的な発想が必要なのかもしれない。

もし、食糧不足が起きたらどうなる?

実際に、日本で食料危機に陥った場合、われわれ国民はどうなるのだろうか……。農水省のシミュレーションによると食料品の輸入がストップしたときには、カロリーの高い焼き芋や粉吹き芋などの「イモ類」を主食にして、毎食のようにイモを食べる「イモ類中心」の食生活を提案している。

小麦やコメは1日1杯程度に抑えてイモを代替にすることで主食を賄い、さらに牛乳は5日に1杯、焼肉は19日に1皿、卵は3カ月に1個……。そんな食生活に切り替えていくことになるとしている(農林水産省「食料自給率及び食料自給力の検証、2019年11月」より)。

当然ながら、農地をカロリーの高い「イモ作」に切り替えることも必要になってくる。日本の場合、食糧の7割近くを輸入品に頼っているわけだから、たとえば戦争や災害などによって、長期にわたって食料品が海外から入ってこなくなれば、当然ながら食料品が不足する。

農水省は、いざというときに備えて農産物備蓄を行っているが、次の3品目しか備蓄がない状態だ(2019年度現在)。それもまた、民間にお願いベースでの“備蓄”が含まれている。

●コメ……政府備蓄米の適正備蓄水準は100万トン程度
●食糧用小麦……国全体として外国産食糧用小麦の需要量の2.3カ月分
●飼料穀物……国全体としてトウモロコシ等の飼料穀物100万トン程度を民間備蓄

要するに、政府が単独で食糧を備蓄しているのはコメのみ、というわけだ。万一、海外からの食糧品が入ってこないことが明らかになった場合、可及的速やかに全国の農地でイモの栽培など、高カロリーな作物をつくり始めなければならない。

その場合、9割近くを輸入に頼っている「エネルギー」も絶たれると考えられる。言い換えれば、農作業も人力や家畜の労力に頼ることになる。まさに、半世紀以上前の世界に戻ることになりかねない。

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