日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない 6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか

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ちなみに、日本のエネルギー自給率は、11.8%(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計、2018年度確定値」より)。東日本大震災の影響で低かった2014年の6.4%よりは回復したものの、世界的にみてもOECD35カ国中の34位と最低レベルの数字だ。

つまり、日本はエネルギーと食糧という国民生活に最も重要なライフラインを海外に頼っていることになる。

石油備蓄日数も、187日(2019年現在)しかないため、食料不足が深刻になって、イモ類を作らなければならないことがわかった段階で、農機具を動かすためのエネルギーが不足している可能性もあるということだ。

一方で、食料輸入先の国の事情も考えなくてはいけないだろう。例えば農水省の資料によると、一般的な「天ぷらそば」を例に考えてみると、ソバは中国やアメリカ、天ぷらの中身であるエビはタイ、ベトナム、インドネシアなど、天ぷらの衣となる小麦はアメリカやカナダ、そしてその天ぷらを揚げる油は、カナダから主に輸入している。

天ぷらそばの食料自給率は22%にしかならない(2014年の数値)そうだ。単純に考えて、天ぷらそば1杯にしても日本は世界中の国から、さまざまな食料を輸入して日常生活を送っているということになる。

仮に、中国とアメリカが戦争状態に陥るような地政学リスクが高まったら、日本は真っ先に食料不足とエネルギー不足に陥る可能性がある。

食料争奪戦争はすでに始まっている?

とはいえ、近年の世界では食糧争奪戦がすでに始まっている、と考えてもいいだろう。その先陣を切っているのが、食糧大量消費国の「中国」だ。13億人の国民を養うために、中国政府はなりふり構わない食糧争奪戦を繰り広げている。

食料も含めた安全保障問題の答えは簡単には出てこない。日本は、新型コロナによって日常的なリスク管理の重要性を学んだはずだ。食料やエネルギーに対するリスクも、日常的な危機管理が不可欠だ。

農水省は、ホームページで「食糧自給率向上に向けた取組」としてさまざまな政策を打ち出している。生産面、消費面両方からアプローチしているものの、人口減少、高齢化が進行する中ではなかなか効果を上げられそうもない。

かつて、イギリスは食糧自給率を40%程度から70%にまで引き上げることに成功している。ただ、イギリスの農家1戸当たりの経営規模は日本の70倍もある。海外のケースをそのまま生かせないのも事実だ。

日本は、日本独自の方法で食料自給率を上昇させていくしかない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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