「片頭痛治療」で実は画期的な変化が起きている 相次ぐ新薬の登場は単なる偶然ではなかった

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現在の治療で広く使われている「トリプタン」という薬は、日本では2000年から処方されるようになっている。だが予防薬ではなく症状が出てから使う薬であるうえ、症状が重い人にとって効き目は弱く、新しい薬が待ち望まれていた。そこに登場したのが冒頭の新薬3つだ。

患者数の多い疾患であるにもかかわらず、片頭痛が起きるはっきりした原因はこれまでわかっていなかった。痛みが起きるメカニズムにはいくつかの説が提唱されてきたものの、2010年代になり、ようやく悪さをしていた”犯人”を捕えた。それは、顔の感覚を脳に伝える神経から放出される「CGRP」という物質だった。

新薬の開発が一斉にスタート

ズキンズキンと脈打つような拍動性の痛みは、脳の血管が拡張することによって、血管の周りを囲んでいる神経に触れて起こっている。CGRPは、片頭痛のトリガーになる特定のストレスや天気の変化などの要因によって神経が興奮すると放出される物質のこと。その働きによって脳の血管を拡張させてしまうのだ。

直接血管を拡張させるターゲットが明らかになったことで、2014年から2015年にかけて海外の製薬会社による新薬開発が一斉にスタートした。

これまでの治療薬は、痛みが起きる流れの“上流”に位置する神経の興奮を抑えてCGRPの放出を減らすことを狙ったもの。だが、今回の新しい予防薬は、その流れの”下流”で放出されたCGRPの働きそのものをブロックすることを狙った「抗CGRP抗体」と呼ばれる。アメリカでは2018年に承認を取得。国内での臨床試験を経て、今年に入り一斉に国内販売が始まった。

実際に医療現場での投与が始まってからおよそ半年、患者の反応はどうなのか。前出の平田氏は「これまで50人に投与して、45人で症状が改善している」と話す。臨床試験では半数の患者で症状・頻度が約50%改善したというものだったが、実際の手応えは同等かそれ以上のようだ。

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