「片頭痛治療」で実は画期的な変化が起きている 相次ぐ新薬の登場は単なる偶然ではなかった

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新薬は従来の飲み薬と違い、いずれもバイオテクノロジーを駆使して製造される「抗体医薬」と呼ばれるもの。そのため注射が必要で、価格も保険適用後で月に1万円ほどと従来の薬に比べて割高だ。それでも、症状が重い人にとって寝込むほどの発作が減ることの意味は大きい。

ただし、新薬は作用メカニズムが新しいこともあり、症状が特に重く従来の治療で効果がなかった患者に対し、専門医しか処方ができない条件がついている。

4月発売のエムガルティの販売を担当する第一三共の奥田英邦プライマリ・マーケティング部長は、「発売直前に条件がついたことで、処方できる医療機関は当初想定の3分の1に減ってしまった」と話す。だが、「投与患者は逆に想定以上だった」という。新薬を待ち望んでいた患者は多かったわけだ。

マーケティングで珍しい取り組み

もっとも、第一三共は、ドラッグストアで買えるわけではない医薬品で珍しいマーケティングの取り組みを行っている。発売当初に、若い女性をターゲットに、ネットで片頭痛という疾患の理解を深めるための広告を展開したのだ。これは、ある程度の症状があっても、医療機関を受診しない患者が多いからだという。

8月に「アイモビーグ」を発売したアムジェン社も、疾患啓発の一環としてLINEアプリ上で新サービスを立ち上げた。オンライン医療を展開するLINEヘルスケア社との取り組みで、サービス上で専門医療機関を探せるほか、「頭痛ダイアリー」機能を搭載している。

ダイアリーでは症状の程度や服薬したかどうか、天候の変化や光・食事の内容など頭痛の誘因などが一覧になっており、その都度記録を残せる。痛みのトリガーは人それぞれのため、患者自身気がついていないような誘因を見つけるきっかけにもなる。

原因物質の特定とバイオテクノロジーによる新薬が生み出した片頭痛治療のパラダイムシフト。痛みで仕事や家事が手につかないという悩みを解消する人たちが増えそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事