「ちょっと投資でも」で失敗する人が知らない鉄則 堅実な資産形成には「努力」と「運」が欠かせない

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もちろん、持っていた銘柄の株価が、ひょんなことで10 倍、20倍にまで跳ね上がることはありえます。しかし、やみくもに買った銘柄で、そのようなことが起こる可能性は、ほとんどないといってもよいでしょう。

最初の銘柄選びの段階で、しっかり企業を調べるなど下準備をしたからこそ、株価が10倍、20倍に値上がりする銘柄を持つことができたのです。

リスクを管理できないと運は逃げていく

運は偶然性のものではなく、多分に必然性が高いものなのです。では、運を維持していくためにはどうすればよいのでしょうか。

私の友人の体験を元に、ちょっとした事例を紹介します。

米国の大学に通っている彼は、このあいだ、少しだけ日本に帰ってきていました。そして、再び大学に戻っていったのですが、飛行機を降りて自分のスーツケースが出てくるのを待っていたところ、いつまで経っても出てこなかったそうです。誤って他の空港に運ばれてしまったのですね。

仕方がなく、彼は空港に停めておいた自分の車に乗り、大学の寮に戻ろうとしたところ、片方のライトが壊れていて、点灯しませんでした。それでも車に乗って走り出したら、案の定、警察に呼び止められました。

「運転免許証とビザを見せなさい」と警官。

「ビザ、ビザ、ビザ?」と彼。

そう、彼は事もあろうに学生ビザを、他の空港に飛んでいったスーツケースのなかに入れてしまっていたのです。もし学生ビザがあれば、自分の身元も照会され、事はそれほど大きくならずに済んだのでしょうが、学生ビザがなかったばかりに、自分の身元証明などに時間がかかり、とんでもなく大変な状況になってしまいました。

話し終えると、彼は、「運が悪かったんだよね……」とつぶやいたのですが、私は「そうではない」と言ってやりました。「それは運が悪いのではなく、リスクマネジメントができていないだけの話じゃないの?」と。

運というものは、リスクマネジメントがしっかりできていないと逃げていきます。したがって、運を維持したいのであれば、まずリスクマネジメントを忘れないようにしてください。これは投資をしていくうえで、絶対に必要な条件のひとつです。

さて、今回はみなさんにぜひ覚えておいてほしい「心構え」をご紹介しました。投資というものは奥が深く、「これさえ押さえれば絶対にうまくいく」と言い切れるものではありません。しかし、ご紹介した「努力」と「運」はとても大切であることは間違いありません。

みなさんも「努力」と「運」を忘れずに、「堅実な投資」にトライしてみるのはいかがでしょうか。

松本 大 マネックスグループ会長

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まつもと おおき / Oki Matsumoto

1963年埼玉県生まれ。1987年東京大学法学部卒業、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。1990年ゴールドマン・サックス証券に転じ、1994年史上最年少の30歳で同社のゼネラル・パートナーに就任。1999年ソニーとの共同出資でマネックス(現マネックス証券)を設立。25年間、社長・CEOとしてマネックスを牽引し続け、2023年6月より現職。経済審議会委員、 東京証券取引所その他複数の上場企業の社外取締役を歴任。現在はルビ財団ファウンダー・評議員、マスターカード社外取締役、ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際理事会副会長、日本将棋連盟理事も務める。

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