享年37歳空手家ベーシストの彼女が遺した生き様 33歳でがん告知、SNSやブログに刻み続けた

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その後はInstagramやFacebookでも病状についてオープンな投稿が見られるようになる。病床でウィッグを外した写真、点滴を受けている写真なども投稿し、日常のなかに入院治療を溶け込ませていった。4月には背骨への転移が見つかり、主治医から「完治は難しい」との説明も受けた。それでもやはりネガティブな表現はなく、淡々として明るい表現で一貫している。

「やりたい事は今のうちにです」

<遠征前に、転移した骨の癌治療も合わせて始まりましたが、すっかりロン毛です、すっかり元気に新譜制作中です>
(2018年7月11日 Instagram/https://www.instagram.com/p/BlFTvH_Ac4g/
<抗がん剤投与で顔に増えたホクロの数は20個以上、これはもうそばかすかな。
 うちは今日も一日中治療
‪ 皆さん風邪に気をつけてくださいね‬>‬
(2018年9月19日 Instagram/https://www.instagram.com/p/Bn5nQ-onDxF/

抗がん剤の副作用による変化を受け入れて新しいメイクやウィッグを試したり、前ターンで苦しんだ治療に備えて痛み止めの薬や熱中できる映画をそろえたり。読者を心配させない伝え方で、なるべくフラットに病状を表に出すようにしている。

しかし、病状は予断を許さない。2018年12月に35歳の誕生日を迎えて間もなくの頃、脳に3つの転移が見つかった。この時点で見落としていたら半年後には死んでいたと医師に言われた。そのうえで「10カ月から5年」と余命宣告も受ける。

<ご報告
 検査の結果、背骨他に
 脳に3つ転移が見つかり
 緊急入院で放射線治療のためお休みします
 体に麻痺を起こしていてベースは弾けない言葉も上手く話せない
 腫瘍が小さくなれば脳の圧迫も無くなり麻痺も治るようなので
 可能性にかけたい
 まだ諦めたくない、
 大丈夫
 何事も気持が強い人が勝つ>
(2018年12月14日 Instagram/https://www.instagram.com/p/BrXiuZTHotK/

連日の放射線治療の副作用で夢と現実の区別がつかない日々を耐えると、年末には滑舌が回復し、笑顔が左右対称に戻ってきた。そして年明けに退院すると、間髪入れずにスタジオに入る。11月に復活したこけしDollのバンコクツアーに向けて、指先の感覚を取り戻すためだ。ツアーは無事成功。その足で世界遺産を観に行った。

<アユタヤ遺跡
 毎年世界遺産観る目標が早くも達成できました~
 そのうちは無いのですよ、
 やりたい事は今のうちにです>
(2018年1月28日 Instagram/https://www.instagram.com/p/BtKxw57lWz-/

「やりたい事は今のうちに」。

2019年7月、ICUから生還したときの写真(ゾニーさん提供)

この言葉を実践するには、死が間近に迫っている現実と、元気な頃の自分とは違う体力と気力を受け入れる必要がある。

簡単なことではないが、中鉢さんはがんの告知を受けてからこのスタンスを貫いているように映る。それは、麻痺や発作に襲われるようになっても変わらなかった。

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