これから「人を進化させる新技術」が次々生まれる 白熱対談!未来の人類「ネオ・ヒューマン」の姿

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南澤:技術としては、今後いろんなことができるようになりますが、それを1人ひとりが選択するのか、それとも社会として選択するのかで未来の姿は大きく変わります。そこを考えなければならない時に来ていると思います。

南澤孝太(みなみざわ・こうた)/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)教授。2005年東京大学工学部計数工学科卒業、2010年同大学院情報理工学系研究科博士課程修了、博士(情報理工学)。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特別研究助教、特任講師、准教授を経て2019年より現職。JSTムーンショット型研究開発事業プロジェクトマネージャー、超人スポーツ協会事務局長、Telexistence inc.技術顧問等を兼務。KMD Embodied Media Projectを主宰し、身体的経験を伝送・拡張・創造する身体性メディアやサイバネティック・アバター技術の研究開発と社会実装、Haptic Designを通じた触感デザインの普及展開、新たなスポーツを創り出す超人スポーツやスポーツ共創の活動を推進(撮影:尾形文繁)

100年前なら、こんな議論は必要なかったかもしれません。技術を開発し、こういった議論をする側の人と、その後、長いスパンをかけて実際に技術が開発されて、それを享受して生活する当事者とが、時間的に1、2世代離れていたと思うのです。

ところが、ピーターさんは、ALSを発症して4年、そして本書に書かれているのは最近2年の話です。自分の考えたことを、そのまま自分が享受するという短いスパンになっています。

こういう時代になったからこそ、みんなが当事者になったとも言えるのではないでしょうか。

テクノロジーと倫理観

三木則尚(以下、三木):100年前との違いは、今はコンピュータの性能がすごく進化していることですね。今我々が手にしているスマホは、実は、14年前のスーパーコンピュータと同じ性能なんです。それほど進化している。VRの研究は90年代から、AIの研究は70年代からはじまりましたが、もうここまで進んで実装されているわけです。

三木則尚(みき・のりひさ)/慶應義塾大学理工学部教授、国際交流委員長。2001年東京大学大学院工学系研究科機械情報工学博士課程修了。博士(工学)。マサチューセッツ工科大学航空宇宙工学科ポスドク研究員、リサーチエンジニアを経て、2004年より慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師。2017年より同教授。マイクロ・ナノ工学をベースに、医療やICTへの応用研究を遂行中。2017年5月に新しい減塩を実現する株式会社LTaste創業。2015年より機械工学科において、技術者倫理教育を行う「創造と倫理」の授業を担当。QWS de RINRIシリーズモデレータ(撮影:尾形文繁)

アバターや合成音声などはいずれできるでしょうし、それに対しては何も問題ないと思いますが、本書には、健康な臓器も入れ替えてしまうということが書かれています。ここは大きな議論になると思います。

たとえば、アンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝子検査の結果、乳がんになる可能性が非常に高いということで、予防的に乳腺をとり、話題になりました。医療的な診察を受けたわけでもなく、遺伝子検査というものによって、病気でもないのに手術をした。これは大丈夫なのか、という議論です。

同じく、健康な臓器を機械に入れ替えてしまうことは、テクノロジーとしてはありうるけれども、今後実際に誰かがやろうとしたときに、社会から「ダメ」と言われることがあるだろうと思います。

次ページテクノロジーに「置いていかれる人」がいるという問題
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