これから「人を進化させる新技術」が次々生まれる 白熱対談!未来の人類「ネオ・ヒューマン」の姿

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南澤:生まれたときの自分と、死んだときの自分というのは、何段階か変わる、というのが今の時代です。つまり、ピーターさんが「ピーター2.0」になったように、私たちはみな「1.0」のままでは死ねない。

AIは、2045年がシンギュラリティだと言われていますが、たったの二十数年後です。その時も、そして、さらにその20年後も僕たちはまだ生きている可能性が高い。「2.0」になるぐらいの変化は、死ぬまでにあと2回ぐらいは起きると想像しておかなければいけません。

今起きている大きな変化は、あらゆるテクノロジーが「人類の進化」として使われつつあるということです。

現在は、物理的な世界に自分の肉体的な存在があり、それにプラスして、デジタルのバーチャル世界も生活圏になっています。自分というものが、物理的世界とバーチャル世界に分散的に存在する状態です。

生まれ持った自分自身のアイデンティティと、別のバーチャル世界でのアイデンティティがパラレルになっている。これによって、肉体的な制約が、その人の人生の制約にはならなくなります。制約のないバーチャル世界を選べるからです。

僕たちはいろんな本を読み、いろんな人の人生を吸収して、それを自分のどこかに取り入れながら、自分というものを形成していきますが、そういった選択肢がパラレルの世界でさらに増えることになるでしょう。

ピーターさんのように体を拡張したり、脳にAIを埋め込んだりといったことは、今後選択肢としてありうると思いますが、その選択肢を身に付けた人間の価値観が、いままでと変わらなければ意味がありません。

より深い、より広い価値観を、人と人との間でどう構築できるのか。その時のネオ・ヒューマンの思考回路や、環世界、つまり自分たちが知覚しているこの世界のとらえ方はどう変わっていくのだろうというところが、今後のアジェンダになるように思います。

「究極の自由」という希望

長谷川:南澤さんのおっしゃったことに、すべて同意します。私は、『ネオ・ヒューマン』を読んで、希望しかないなと思いました。

私たちは、いま、自分の体や自分の環世界からは抜け出せていませんが、そこから自由に抜け出せる技術ができたら、究極の自由だと思います。ピーターさんが言う「究極の自由」もそういうことでしょう。

自由を得ることで、他の人への共感を得たり、それまで抑圧されていた人が解放されるというような未来があると嬉しいなと思います。

栗栖:私は、「究極の好奇心」というキーワードが思い浮かびました。果てしない好奇心の先に生まれてくるもの、どうしたらこれができるのか、こんなことができたらどうなるだろうという好奇心が、新しい未来の人類を作り出すのだと思います。

いま議論されたような、希望のある、取り残される人のいない、格差のない未来になればいいなという思いも込めて、未来の人類が生まれてきたらいいなと思っています。

三木:『かもめのジョナサン』という小説があります。普通のかもめは、普通に過ごしているのだけど、あるかもめが「自分は音速を超えるんだ」と考えた飛行訓練をしていたら、ある時、壁を超えて、ちがうレベルのかもめになっていた。すると、距離も時空も関係なくなって、いつでもどこでも私は存在できるということになるわけです。これはまさしくVRの世界です。

VRの世界への移行は当然であり、そこから先は、好奇心でもあり、想像力でもある。どこまで行くのかはわかりませんが、ネオ・ヒューマンというものは、我々とは次元の違う想像力を持った人類ではないかと思います。

泉美 木蘭 作家・ライター

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いずみ もくれん / Mokuren Izumi

1977年三重県生まれ。24歳でイベント企画会社を起業し、即刻倒産。借金返済のために働く日々をつづったWebサイトが話題を呼び、作家デビュー。以降、週刊誌やWeb媒体等で執筆。TOKYO MX「モーニングクロス」「激論!サンデーCROSS」などテレビ番組でレギュラーコメンテーターとして出演。著書に『オンナ部』(バジリコ)、『エム女の手帖』(幻冬舎)、『会社ごっこ』(太田出版)等。趣味は合気道とラテンDJ。

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