「自分は平凡」と諦める人と突き抜ける人の決定差 「環境」と「自己」の受け止め方がすべてを左右する

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スタンフォード大学の心理学者クロード・スティールは、「環境のシグナル」に関してこんな研究をしています。スティールの研究チームは、成績が中位程度の学生を3つのグループに分けました。

1.「上位の学生と成績が比較される」と伝えるグループ
2.比較することを伝えないグループ
3.比較することを伝えず、さらに「勉強とは自分の力を伸ばす経験だ」という肯定的なメッセージを伝えるグループ

はたして、この3グループの成績にはどのような違いが生まれたかのでしょうか?

結果として、2と3のグループは以前に比べ成績が2倍に伸びたのです。中でも、3のグループの学生たちの成績は時間が経つほどに伸びていきました。この3グループは、言い換えると、以下に分けられます。

1.「否定的なシグナルを受け取るグループ」
2.「否定的なシグナルを受け取らないグループ」
3.「肯定的なシグナルを受け取るグループ」

そして、肯定的なシグナルを受け取るグループほど、どんどん成績がよくなる好循環に入ることができた、というわけです。スティールは、「環境のシグナルを断ち切るのは、貧困や遺伝子を変えるよりも現実的だ。その点で明らかな利点がある」と述べています。

今あなたが「受け取っている」「拒絶している」シグナルは?

テストの成績が悪い学生、落ちこぼれてしまう学生というのは、「家庭のせい」「才能がない」「努力が足りない」というわけではありません。それ以前に、「否定的なシグナル」を受け取っているかどうかが極めて重要になってきます。「自分はできない」「平凡だ」というノイズのようなシグナルを受け取り続けていると、その考えが繰り返し刷り込まれていきます。

社会心理学者のローラン・ベーグは「自分自身に対する考えはかなりの部分を他人の判断に依存」していると指摘します。スティールが証明したのは、この誤った判断を断ち切ることの大切さです。

また、心理学者のアン・クリスティン・ポステンは、環境のシグナルというのは私たちがそれを信じたときにだけ影響を及ぼすという事実を明らかにしています。いわく、環境に潜むすべてのシグナルは、それを受け取る側が「これは自分に送られたシグナルだ」と考えたときにだけ影響を与えるといいます。つまり、否定的なシグナルでも、自分に向けられたものだと認識しなければ、個人には何の効果もないことがはっきりしているのです。

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