豪雨被災から10年、復旧すすむ只見線不通区間 3つの鉄橋が流されたが、2022年に運転再開へ

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会津川口―只見間以外の区間は、2012年10月までに運転を再開したが、当該区間は被災前より輸送量はきわめて少なく、災害発生前の2010年度の輸送密度は49まで低落していたため、JR東日本はバス転換を提示するなど存廃の議論となった。しかし、長期の議論と検討の末、地元自治体および福島県は鉄道の維持を決断し、2017年末に上下分離方式を採用して残すことでJR東日本と合意し、覚書が交わされた。

福島県は運休区間(会津川口ー只見間)の鉄道施設と土地を保有、維持管理、JR東日本は被災前の1日あたり3往復を基本に運行を担う。営業再開までに福島県は第三種鉄道事業者、JR東日本は第二種鉄道事業者の許可を取得する。

復旧費は約81億円(当時)で、福島県が3分の2、JR東日本が3分の1を負担し、鉄道施設の復旧はJR東日本が施工したうえで完成後に福島県に無償譲渡する。運行に際してJR東日本は県に線路使用料を支払う(実際は収支にあわせた減免措置が講じられ、実質的には無償になると考えられる)。

流失3鉄橋は2018年に復旧工事スタート

このような内容で復旧工事に漕ぎ着けたのは2018年で、6月15日に福島県金山町の大塩地区において起工式が執り行われている。

会津川口から不通区間に入り最初に出合うのが第五只見川橋梁。河岸が洗堀されたため橋台を後退させて約45m分の鈑桁2連が新設された(会津川口ー本名間、写真:山井美希)

冒頭に挙げた3橋梁の状況を順に記すと、会津川口―本名間の第五只見川橋梁は径間77.5mの曲弦下路トラス桁を挟んだ延長194.1m、5径間の橋梁で、川幅が広いため全壊は避けられたものの、会津川口方の左岸が洗堀されて橋台と上路鈑桁1径間が流失した。このため復旧は新橋台をやや後退させ、橋脚を1基増設、鈑桁は2連とされた。トラス桁を含む他はそのまま利用されている。鈑桁1径間分が延びているため、橋梁の延長は212.8mとなった。

本名駅から会津越川方の第六只見川橋梁は、本名ダムの堰堤と並行に下流側近傍に位置している。径間77.5mの上路トラス桁と短い上路鈑桁を組み合わせた延長169.8m、9径間の橋梁だったが、左岸河床が洗堀されてトラス桁の橋脚が倒壊し、トラス桁および前後の上路鈑桁の計3径間が流失した。また、被災時には水位は上路トラス桁の下弦すれすれまで上昇した。このため、新橋梁は河床洗堀を考慮して、流路上の径間を倍近く拡げた径間135.6mの下路曲弦トラスを採用、左岸側橋脚と右岸側橋台を新設、左岸側鈑桁6連のうち4連のみ再利用している。

次ページ 治水対策と連携して復旧工費を圧縮
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