豪雨被災から10年、復旧すすむ只見線不通区間 3つの鉄橋が流されたが、2022年に運転再開へ

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会津横田―会津大塩間の第七只見川橋梁も、径間77.5mの上路トラス桁と右岸側に5径間の上路鈑桁を組み合わせた延長164.8m、6径間の鉄橋だった。ここは水位がトラス桁の半分近くまで上昇して桁を押し流し、隣接の鈑桁1連とともに流失した。そのため、径間106.6mの下路曲弦トラスを採用した。橋脚数を減らすため、鈑桁部分も径間を広げて2連に架け替えることが検討されたが、結果的にはそのまま再使用となった。トラス桁部分の変化により橋梁の延長は182.8mとなっている。

なお、只見まであと1駅の会津塩沢―会津蒲生間には第八只見川橋梁が架かる。ここはダム湖の左岸側斜面に沿って線路が敷設され、旧橋梁は下路曲弦トラス桁2連の前後に大小計16連の鈑桁を連ねた延長371mで、さらに盛土区間137mを挟んで会津塩沢側には短い径間で16連の深沢橋梁144mも架かっている。

会津桧原ー会津西方間の第一只見川橋梁を渡るキハE120形。主径間112mと側径間32mずつを合わせた延長174mの巨大アーチ橋で只見線を象徴する鉄橋(写真:山井美希)

これらは水を被り、全般にわたり土砂流入、堆積、道床流失、土留壁変状、流木堆積、一部の橋脚洗堀、盛土崩壊、路盤沈下等を引き起こした。このため復旧計画の当初案では約1kmにわたりレールレベルを最大7m引き上げることが立案された。しかし事業費が高騰することから5mの扛上案に改められ、さらに2016年11月、上流ダムの流量調整や当該地のダムの水位調整、計画的な堆砂対策による新たな水位低下策等を講じることとして、扛上せず旧状の線路を再生する最終案となった。

1年縮まり半年延びた完成時期

そこで、線路の安全対策としては、盛土箇所の法面工や土留擁壁の新設、補強、橋桁の修繕、河床根固めや橋桁流出防止ストッパーの設置等を行い、10月首現在、軌道関係の工事は完了している。これにより当該箇所の復旧費は約45億円と見積もられたものが約25億円に圧縮されるとともに、4年以上と見込まれた工期も3年に短縮された。

一方、第六、第七只見川橋梁のトラス桁架け替えは、両岸に鉄塔を立てて架設用ケーブルを渡し、吊り下げられたクレーンにより桁を運ぶ手順とされたが、第六橋梁にあってはケーブルを固定するグランドアンカーを打ち込む堅い地層が想定より深い位置であることが着手後に判明。そのため固定地点にコンクリートウェイトを施工してアンカーを打ち込むこととなり、工事完了見込みが2021年度中から半年延び、2022年度上期中に変更されている。

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