世界初の「診る」人工知能 人間知生かす省エネ診断《戦うNo.1技術》

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 すると意外な事実が判明した。足を引っ張っていたのは夜間の体育館だったのだ。夜7~10時半の間で電気使用量は突出。言うまでもなく授業のない時間帯である。放課後、地域に開放している体育館でのサークル活動が、光熱費を高騰させていたのだ。「指摘がなければ気づかなかった」と林政広校長。交渉の結果、体育館の使用は午後9時までとなり、電気代は年間約30万円改善した。

コンサルタントが足繁く学校に通い、調査・分析したのは、南太秦小1校のためだけではない。その間彼らは、南太秦小をモデル事例に、人工知能のアップデートを急いでいた。背景には二つの事情があった。

一つは急激な競争激化だ。改正省エネ法(今年4月施行)の影響もあり、エネルギー管理システムの市場は活況だ。パナソニック電工など大手競合の参入が相次ぎ、もはや「オムロンだけができる事業ではない」(環境事業推進本部の立石泰輔・顧客開発部長)。

さらに、従来のビジネスモデルに到達していない、というジレンマもあった。オムロンの機器には、モノの枠を超え、人間に代わって機能するという使命がある。工場の最終点検をするセンサーには、熟練技能者の目に代わって不良品を摘出するという使命があり、自動化用の制御機器には、工場を統括するリーダーに代わって無人の製造現場を滞りなく回す、という使命がある。人工知能を備えた機器こそが、オムロンの本来の強みであるはずだった。

だがeウォッチングに関しては、機器と知恵とが分離していた。機器の役割は電気使用量を見る、つまり記録することだけ。コンサルタントがその記録を“診る(解析する)”ことによってしか、顧客に価値をもたらすことができないでいた。

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