世界初の「診る」人工知能 人間知生かす省エネ診断《戦うNo.1技術》
“見る”を“診る”に高める 50時間を10分に短縮!
また、eウォッチングでは取り付けるセンサー、計測箇所が増えるほど、データ量が膨らむ。省エネ対策を始めたばかりの顧客からは、「データが煩雑で自分たちでは使いこなせない」と不満の声が漏れてきた。
「近い将来の需要増に応えるには数百人のコンサルタントが必要だが、それだけのコスト(人件費)を抱える余裕はない」(立石部長)。計測箇所が限られる学校やオフィスビルならコンサルタントは1人でも対応できるが、数百カ所に及ぶ工場となると話は別。実際、計測箇所が約200カ所のオムロン熊本工場では、計測点の巡回から改善提案までに50時間を要した。
これらの課題に対応する、eウォッチングの一段進化形とも言えるエネルギー自動分析システムが、今年1月に投入した「ene−brain(エネブレイン)」だ。コンサルタントの知恵を入れ込むことで、オムロンが本来目指す、“見る”を“診る”に高めた世界初の人工知能システムである。エネルギーの削減余地を自動的に抽出し、実績値のグラフを赤く色分けする仕組みで、赤色の部分をクリックすると、「無駄」と判断した理由が表示される。
独自の知識情報制御技術を応用し、人間の知恵を実行可能なアルゴリズム(計算手段)としてコンピュータに学習させるこの技術は、製造工程を自動化する研究開発で培ったものだ。工場の熟練技能者は音の変化で機械の不調や故障を察知する。彼らのノウハウを機械に搭載することで、その技を脈々とつないできた。
今回、エネブレインに入れ込んだのはコンサルタントの知恵だ。無駄を抽出する際の着眼点を整理し、アルゴリズムに落とし込んだ。人工知能の自動分析と、人間が実際に行う分析は、80%以上合致するという。正確さもさることながら、コンサルタントが50時間かかっていた処理はたった10分間に短縮された。