中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に

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自分が買ったマンションの建設も6月にストップしたからだ。このほかにも、ホーさんの住む町では恒大集団が進めていた3つの大規模プロジェクトの建設が停止したか、停止する見通しだ。建設業者への支払いが滞ったためとされる。

地元住民の声を吸い上げる目的で政府がオンライン上に用意した掲示板は、恒大集団からマンションを購入した人々からの怒りのこもった苦情であふれかえっている。完成もしていない物件に対し住宅ローンを払い続ける必要があるのか、恒大集団が倒産したら全財産が「水の泡」になるのか、といった疑問をぶつける人もいる。

ある住宅購入者の一団は広州の掲示板で、恒大集団が頭金で得た資金を、地方政府の管理下で厳格に管理されているのとは違う私的な口座に入れていることがわかったと述べた。四川省眉山市の別の住宅購入者は掲示板を使って、当局者に「国民のために正義を!」と訴えた。

当局の沈黙がもたらす景気の沈滞

恒大集団の倒産は2008年に世界金融危機の引き金を引いたリーマンショックの中国版になるのではないか——。そうした疑問が著名な投資家らの間で浮上しているにもかかわらず、中国政府はほぼ沈黙を貫いている。

「大きすぎて潰せない」とみられてきた企業であっても救済の対象とはならない、というスタンスだ。そのため地方政府は、住民のいら立ちに孤立無援で対応しなければならない状態となっている。

恒大集団をはじめとする不動産開発企業の建設継続や巨額債務対応を支援するという明確なメッセージが中国政府から発せられない中、多くの国民は現金にしがみつき、住宅購入を先延ばしするようになった。

ホーさんはまだ、恒大集団から購入したマンションの完成予定を聞けていない。同社から遅延の通知は来ていないとはいえ、建設が数カ月前に止まったのは見ればわかる。

ホーさんは来年5月に結婚する予定だが、それも見直さなければならない状況だ。本来ならマンションは年末までに完成する予定で、結婚式の一環として華々しく披露できるよう内装に手を加える時間も十分に確保できるはずだった。

ホーさんが言う。「建設が遅れたから、結婚式も延期だね」

(執筆:Alexandra Stevenson記者、Joy Dong記者)
(C)2021 The New York Times Company

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