サイゼリヤ、深夜営業廃止でも「黒字宣言」の根拠 2期連続の営業赤字からどう脱却するのか

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こうした取り組みにより、損益分岐点をさらに引き下げていく。足元ではパスタやピザなどにも使われている小麦の価格高騰や、食材輸入に関わる原油高もリスクとなっているが、さまざまなコスト圧縮で乗り切る構えだ。なお、値上げについては、昨年価格改定に踏み切ったこともあり、現時点では消極的だ。

秋田や鳥取で初出店へ

単なるコストカットだけでなく、「次の一手」も着々と打つ。従来、現金決済のみを貫いていたサイゼリヤだが、コロナ禍での非接触需要高まりなどを受け2021年の春先にはキャッシュレス決済の全店対応にも踏み切った。

「出店の選択肢」も増やす。今年4月には従来店の約4割の大きさである小型店舗を東京都・練馬区にオープンし、10月にも同区で2号店を出店した。

こうした40坪ほどの小型店モデルを構築し、コンビニ跡などこれまで出せなかったエリアの開拓を進める。1人や少人数でも利用しやすい新業態「ミラノ食堂」の実験も行っており、利益モデルが確立した際には多店舗展開にも踏み切る構えだ。

サイゼリヤが実験を進めている新業態「ミラノ食堂」(記者撮影)

コロナによるテナント撤退などが相次いだことにより、従来出店難易度が高かった大型のショッピングセンターにも出せるようになった。未出店エリアは東北・山陰・四国・九州に現状14県あるが、2021年12月には秋田、2022年1月には鳥取への出店を行う予定だ。

さまざまな施策を打ち出すサイゼリヤだが、国内の経営環境は依然として厳しい。今期のスタートとなる2021年9月の既存店売上高も、コロナ前の2019年9月比で6割程度の水準にとどまる。年末にかけコロナが再拡大すれば、消費者の外食控えはさらに長期化する可能性もある。打ち出したコスト削減策を着実に実行できるかが、新年度のサイゼリヤを左右しそうだ。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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