中国EC大手「京東」が「新型実体企業」を標榜する訳

プラットフォーマー規制を乗り越える秘策とは

また、昨今、米中対立や人口減、規制強化などの逆風が強まる中、中国のプラットフォーマーが新たな成長ができるかが問われている。

こうした中、多くのプラットフォーマーはトラフィックの競争だけでなく、さまざまな業界のデジタルシフトに伴うビジネスチャンスに攻勢をかけている。例えば、アリババは新しいデジタル工場モデルを打ち出し、短納期でオーダーメイドの生産を実現する新たな製造業のあり方を示そうとしている。

新型実体企業とわざわざ言うまでもなく、プラットフォーマーは実体経済におけるデジタル化の担い手として牽引役を果たしながら、さらなる発展を求めることになろう。

四つの柱で実体経済との融合を強化

新型実体企業の宣言とともに、京東の戦略転換もより鮮明になっている。製品・サービスの提供対象を別に四つの柱で実体経済との融合路線を強めようとしている。

消費者向けのサービスは依然として成長の基軸である。商品の品揃えが豊富な「京東商城」の販売力の強化とともに、低価格な製品を中心に取り扱う新たなオンラインマッケートプレイス「京喜」を立ち上げた。また、商品のオンライン販売だけでなく、OMO(オンラインとオフラインとの融合)戦略をも重視する。すなわち、ECサイトと実店舗の連携に力を入れて消費者の体験価値を高めていく。

大手企業に向けてはデジタルソリューションを提供し、家電メーカーをはじめとする産業のデジタル化の“ブレイン”になろうとしている。

中小企業の場合、サプライチェーンや物流の整備への投資を強化し、中小企業の生産力・ブランド力の向上とともに、京東の影響力を拡大していく。

農村地域では、中国政府が掲げた農村振興の目標をビジネスチャンスにし、農村ECの拡大や農産物の流通販売に注力する。

実体経済との融合強化に踏み込んで、新型実体企業という新たな顔でさらなる成長を追い求める京東がうまくいくか、他のプラットフォーマーやネット企業が追従してくるか、今後も注視したい。当然、新型実体企業を護符のように身につければ良いわけではなく、成否はデジタルの力で実体経済にどれほど寄与するかにかかっている。

なお、日本でも楽天やヤフーなどのプラットフォーマーに対して、政府による規制の動きがある。だからこそ、プラットフォーマーのあり方に一石を投じた京東の動きを知っておいたほうが良いと筆者は考える。参考あるいは反面教師になるヒントが多く出てくるだろう。

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