文系の方が「夢をよく覚えている」人が多い理由 80歳超えると夢が減る?など夢の不思議を解説

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先生 海外にはアダム・シュナイダーとジョージ・ウィリアム・ドムホフらによる「ドリームバンク」(注3,4)という、いろんな国や集団、個々人の夢の報告内容をデータとして収集・統計的に分析できるサイトもあるのよ。

A すごい!さまざまな夢の報告をデータとして収集するなんて。国や文化によって、典型的な夢のパターンって変わってくるんですか?

先生 わかりやすいところだと、アジア圏はヘビがよくでてくるし、欧米ではクモが多い印象があるわね。死んだはずの人が夢にでてくるのは、どこの国でも共通して上位。ドイツ人の夢ランキングでは7位くらいにでてくるかな。(注5)

C 地域によって恐怖対象が変わるんですね。でもたとえば、人種としてはアジア人なんだけど、幼少期から西洋で育てば、恐怖の対象はクモになるんですかね?

先生 わからないけど、なぜか日本ではクモへの恐怖が少ないんだよね。むしろ、ヘビやイヌへの怖れのほうが多い。先のドイツの調査では、クモが25 位でヘビは43位。とはいえ、そこまで国や文化ごとの目立った夢の特性の差異はないのよね……。

C 裏返していうと、国籍に関係なく、人間の夢のパターン自体が、普遍性が高い?

悪夢のパターンも共通する

先生 共通する典型的な夢はだいたい一致している。そもそも、ネガティブな夢のほうが記憶に残りやすい。たとえば日本人の大学生の悪夢でよくでてくるものトップ10 は、「落ちる」「追いかけられる」「遅刻する」が必ず入ってくる。あとは、家族や恋人とわかれたり、縁が切れるという夢ね。(注6)そして地震、洪水、火事という災害も入ってきますね。

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ヘビやクモなど、怖い動物がでてくるのは直接的でわかりやすいけど、人間関係がもつれたりする夢も、背景に「共同体で友好的な関係性をたもちたい」という願望があるとすれば、根っこの部分はやはり「生存欲求」にいきつきそうだけど……どうなんだろうね。時代をとおしてテーマが変わらなければ、進化的価値がありそう。たしかなことはわからないけど、家をもったあとに火事にあう夢をみたりするというしね。

悪夢の典型パターンに「遅刻」があるのも深読みすれば、現代社会における社会的生存の背景に他者との良好な関係性の保持があるからかな。原始時代でも「いまから狩り(仕事)にいくぞ」っていってるのに、遅れたら仲間外れにされちゃうだろうしね(笑)。みんなの力をあわせてやっと倒せるマンモスなんかは、ひとりきりじゃ太刀打ちできないもんね。

国や文化でそれほど悪夢のパターンにちがいがないのは、やはりそのあたりに理由がありそうね。「人間だれしもひとりでは生きていけない」という事実だけは、時間と空間を超えた共通事項。この一点を起点に夢は形成されているんじゃないかな。

ヒトは集団のなかで生きる動物。程度の差こそあれ、生存はなんらかの要因になっていてもおかしくないよね。

  • 注1 カタログハウス「通販生活」編集部(2019).読者が繰り返し見る夢 どうして遅刻の夢を見るのか?−マジメな人ほど、遅刻してしまう夢をよく見るんです。 通販生活,2019年夏号,130−135.
  • 注2 シェポヴァリニコフ・A・N(1991).夢のサイエンス みたい夢 みたくない夢 青木書店.
  • 注3 ドリームバンク http://www.dreambank.net HVDCの夢分類の量的解析に関するサイト https://dreams.ucsc.edu
  • 注4 Schneider, A., & Domhoff, G. W. (2020). The Quantitative Study of Dreams. Retrieved February 6,2020 from http://www.dreamresearch.net/
  • 注5 Mathes, J., Schredl, M., & Göritz, A.S. (2014). Frequency of Typical Dream Themes in Most Recent Dreams: An Online Study. Dreaming, 24, (1), 57–66.
  • 注6 岡田斉・松田英子(2017). 大学生を対象とした悪夢の内容別頻度と強度についての調査 人間科学研究,40,121−129.
松田 英子 東洋大学社会学部社会心理学科教授

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東洋大学社会学部社会心理学科教授。お茶の水女子大学文教育学部卒、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程単位取得満期退学。博士(人文科学)。専門は臨床心理学、パーソナリティ心理学、健康心理学。産業カウンセリングとスクールカウンセリングを臨床のフィールドとしている公認心理師、臨床心理士である。著書に『夢想起メカニズムと臨床的応用』『夢と睡眠の心理学―認知行動療法からのアプローチ』(以上、風間書房)、『眠る』(二瓶社)、『図解 心理学が見る見るわかる』(サンマーク出版)など。睡眠の改善から心の健康を高めることに関心がある。

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