斉藤:昆虫図鑑なんか好きでしたねぇ。
安河内:僕も昆虫とか魚類図鑑好きでしたねぇ。
斉藤:本で見るでしょ。それでデパートに行くと昆虫がいる。もう少し大きくなって、自分で雑木林に行くとカブトムシとかがいるわけですよ。
安河内:漫画も好きだったなぁ。SFとか。松本零士さんの漫画とか好きだったなぁ。
斉藤:「宇宙戦艦ヤマト」!
安河内:そう、だから、そこから『スター・ウォーズ』なんかにグッと心を持っていかれるようになっていくんですよ。『スター・トレック』もそう。
斉藤:たとえば、うちの塾で教えているネイティブの英語講師なんかでも、「セーラームーン」で自分の世界観が変わった、日本が大好きになったなんていう人もいますよ。子どもたちに対しても、子どもが好きだというものを日本の教育において大切にしたほうがいいと思うんですよね。
安河内:自分が好きなものと英語が結び付いたときに、一気にモチベーションがスパークすることがありますね。私の場合は映画だったし音楽だった。なんでもいいんです。
斉藤:これは入試の話題に移ってから話そうと思ったんですが、イェール大学の学生を見ていて思ったんですけど、彼らはとことん好きなことを突き詰めてやってきた結果、イェール大学に至っているんですよね。日本の場合は、受験のお勉強をして、結果的にここらへんの偏差値だからって入学してくるじゃないですか。
好きなことを突き詰めて、それが世の中とどう関係しているかを、自分なりに考え、整理するような教育の仕組みになってないんですよね、日本のエリート教育は。
たとえば先日、留学ガイダンスで話をしてもらったイェールを首席で卒業した生徒は、全米空手チャンピオンなんですよ。彼は高校生チャンピオンになって、自分は日本文化と世界の関係をこう考える、というテーマでエッセイを書いてイェールに入っているわけなんですよ。
安河内:部活でものすごく頑張って優秀な成績を残した人っていうのは、英語をやってもけっこうできるようになっちゃいますね。必死で空手をやっていた人が、高校3年生になってそのエネルギーを英語に向けると、英語もできるようになったということも確かにありました。そういうことはあるので、あまりジェネラリスト的に「これは受験に出ないからやめて」というのではなくて、とことん好きなことをやるのもいいと思います。
異能を潰さない
斉藤:親や先生のスタンスとして、何が必要で何が必要じゃないということを、大人が判断しすぎなんじゃないかなぁ。子どもが持って生まれて、自分で考えて取り組むエネルギーを殺さないことですよね。
教育って、人を育てるという側面と、持って生まれているものを殺さないという側面と、両方あるんじゃないですかね。ポジティブに引き上げることと、勝手に育っていく才能を潰さないこと。特に異能の人材を育てるイェールとかハーバードなどの教育機関では、むしろ後者なんですよね。
してあげる教育しか考えないのではなくて、潰さない。これも重要です。小学生で微分積分を教えればできる子はいるのです。その才能を鶴亀算で潰しているのが中学入試であり、言っちゃなんですけど学習塾、予備校なわけですよ。塾業界の利益を考えたら鶴亀算もいいですよ。
でも、子どもの可能性を考えたら、微積分がわかる子にはさっさと教えちゃって、中学生でも解析学をマスターするとか、コンピュータのプログラミングのアルゴリズムをマスターするなんてことを10代でやっていたら、いろんな可能性が広がりますよ。
アメリカにはゴマンといます。僕はイェールで教えていましたから、そういう特殊な数学の能力があってイェールに来ましたなんていう学生にも、日常的に接していました。
安河内:日本の場合は飛び級も何もないですね。
斉藤:それは頭脳の減反ですよ。自分の子どもにどう接しているかを考えると、全然、パーフェクトじゃないですけど、うちの親は完全に放任だったんですよね。勉強しろとは一度も言われたことがない。
安河内:それはうちも同じだ。だから逆に興味を持ったところもあります。
斉藤:だからこそ、自分で勉強するぞって決めたときは、無限に勉強しましたよね。イェールの大学院生だった頃は、1週間に何千ページという論文を読むんですよ。本を書くときには1日に15時間とか机に向かっている。好きだからできるんですよね。
(構成・撮影:宮園厚司)
※次回は9月10日(水)に掲載します。
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